「あなたは雇用保険に入っていないので、お金は出ませんよ」

羽生 辞めた時に、今の仕事につながる“気づき”があったんですよね。

前野 はい。退職に備えて失業給付の手続きを聞いたら、「あなたは雇用保険に入っていないので、お金は出ませんよ」と言われたんです。勤め先の私立学校の慣習で、教員は全員、雇用保険がなかったんです。ここ10年くらいでだいぶ状況は変わったようですが、当時は私立学校の雇用保険加入率って低かったようです。辞めたら当然もらえると思っていたので驚きました。そもそも「雇用保険に入っていないと失業給付はもらえない」ということすら知りませんでした。

羽生 そういえば払っていなかった!と気づいたんですね。

前野 雇用保険という存在さえ意識していなかったというのが正直なところですね。教員なので残業代がつかず給料の金額が毎月一定だったので、給与明細を見るのも4月の昇給と、夏冬のボーナス時期くらい。

羽生 当時はまだお金のことに興味はなかったんですか?

前野 勉強する対象とは考えていませんでした。ただ、この時に、「お金の仕組みを知ることの大切さ」は身をもって体験しました。

「お金について勉強しないとやばいな」と本気で考えるようになった

羽生 大阪に行かれてからはすぐに就職を?

前野 3カ月ほど休んでから、資格学校を運営する会社に就職してマネジメントスタッフとして働きました。とりあえず、「雇用保険に加入できる会社に」という条件で(笑)。ただ、あまり私に向いていない仕事で半年ほどで辞めちゃいました。民間企業で働いた経験がなくてパソコンを使うのも初めてというレベルだったので、周りにも迷惑をかけてしまっているなという負い目を感じていました。

羽生 いつも明るく見える前野さんでも、そういう時はやはり落ち込んだりされたんですか。

前野 ええ、落ち込みました。このままでは自分自身の価値が見いだせなくなるという危機感を抱いたので辞める決断をしました。

羽生 辞めてからのプランは? すでにFPとして独立するという展望はあったのでしょうか?

前野 いえ、まだまだまったく。ただ、この頃にやはり失業給付のことを考えたり、営業マンに言われるままのローンで家を買ったので「このローンで本当によかったのかな」と思い返すようになったり……だんだんと自分事としてお金を意識することが増えてきました。さらに、加入していた保険会社が破綻するというアクシデントにも見舞われたことは大きかったですね。「お金について勉強しないとやばいな」と本気で考えるようになって、FPを勉強し、その後、雇用保険の職業訓練でパソコンを勉強しました。

羽生 どれくらいの期間と費用がかかったんですか?

前野 当時のことにはなりますが、FPの授業料として20万円ほど払って、半年ほど受講しました。受講後に資格試験を受けて合格してから、独立系FP会社にパートとして就職しました。