目の前の子どもの教育費、住宅ローンで手がいっぱい。そんな理由から、なかなか夫婦の老後資金について具体的な策を講じてこなかった家庭でも、先行き不透明な今は「年金減額」「老後破たん」という言葉に敏感になっているかもしれません。特集ではこれまで、心穏やかな老後を送るためにも、公的年金頼みでなく、自分で自分の資産を守るという意識と行動がこれからは大切だということをお伝えしまし、低リスクから順に「個人向け国債」「確定拠出年金」を紹介してきました。
 今回は、お金をもっと大きく増やしたいという人に向けて、「投資信託」の基礎を解説します。具体的にどんな商品を買ったらいいのか、何に気をつけたらいいのか、投資初心者の方はぜひお役立てください。

【入門★老後資金をためる!特集】
第1回 年金4割減の老後に向けお金を賢く増やす方法
第2回 実は銀行に預けるよりも安心な「個人向け国債」
第3回 老後資金づくりで最優先に活用すべきは「確定拠出年金」
第4回 長期で投資できる老後資金なら「投資信託」 ←今回はココ
第5回 DC、投信を運用しているデュアラー3人の活用術

1本の商品を買うだけで分散投資できる

 前回の記事でもお伝えしたように、例えばA社一社の株に多くの投資をすると、A社の業績次第で株価は上下に大きく変動し、リスクが高まります。そこで、投資先を分散させることでリスクを抑えるのが、今回取り上げる投資信託(投信)です。

 分散させるといっても、自分で分散先を決めたり値動きを予想したりと手間をかけて何かをするのではありません。運用自体はプロに丸投げして、プロが世界中の株や債券などで運用している商品を1本買うだけで、分散投資することができます

★安心度のレベル3は
「投資信託」

ポイント① 元本は保証されない
ポイント② インデックスファンドを選べばコストが安くなる
ポイント③ 長期で積み立てるとオトクになる可能性がある

ポイント① 元本は保証されない

日経DUAL編集部 いざ投資を始めようと思っても、できるだけリスクは取りたくないと思ってしまいます。ズバリ、安定して下がらない商品、絶対に上がるおすすめの商品を教えてください。

朝倉智也さん(モーニングスター代表取締役社長。以下、敬称略) 第1回の記事で図表をお見せしたように、投資先は年次リターンの大きい順番で何が上位にくるか、下位にくるか、実にバラバラで法則性がなく、「これは絶対上がる」というのはどんな専門家にも分かりません第1回の記事中の「資産別の年次リターン」を参照)。「これだけ市場や商品を見ているんだから、未来のことも分かるでしょう?」とよく言われてしまうんですが、「ここが天井か底か」という相場は本当に誰にも分からないのです。過去の実績は分析できますが、必ず未来につながるとも限りません。ということから、“分散して買うこと”が重要になってくるわけです

山崎 元さん(経済評論家。以下、敬称略) 広く薄く分散投資する投信は、ほどほどのリスクでお金を増やしたい人に向いています。「個人向け国債」や「確定拠出年金の預金」のような元本保証はありませんが、傾向としては平均的に預貯金を上回る金利で運用できると期待できます。例えば、100万円が1年で平均103万円になるといったイメージです。これはあくまで平均で、もっと増える可能性もあるし、減る可能性もあります。

 買うべきものはシンプルです。5000本以上ある投資信託のうち、9割以上は正直、“ゴミ”みたいなものですが、私がおすすめしているものは次の2つです。

<次ページからの内容>
・山崎さん、朝倉さんがおすすめする商品はこれ!
・重要視すべき「コスト」の考え方とコツ
・投信を買うとき、ぜひ使いたいオトクな制度