東京都品川区大井町にある、キッズカラーのオフィス。近所に住む小学校低学年以下の子ども達とその親達が集まってきます。一見ガラクタのような、不要になった日用品で自由に遊ぶ「コドモガラクタラボ」の始まりです。

 例えば牛乳パックひとつ、ダンボール1枚。これだけでも、自由奔放な発想を持つ子ども達の手にかかれば、色々な遊びが広がります。

 「『ここは何をしてくれる場所なんですか?』と、初めて来られるお母さんによく聞かれます。水泳やピアノ、英語などの習い事のように、常に何かを教えてもらって、受け身でいることが多い環境に置かれている子どもが多いのだと分かり興味深いです。むしろここは、大人が子どもに色々と教えてもらう場所。『いつもダメって言われることができる遊び場ですよ』なんて伝えています。折り紙を何枚も使ったり、思い切りビリビリして遊んだり。これまでに100人以上のお子さんが参加してくれました」

コドモガラクタラボで遊ぶ子どもたち
コドモガラクタラボで遊ぶ子どもたち

 雨宮さんの名刺には、正式名称の「株式会社キッズカラー」の文字はありません。代わりに「こども法人キッズカラー」と記されています。「子どもに寄り添う会社で在り続けたい、という意味を込めて、遊び心で『こども法人』とつけました」。雨宮さんは笑顔を見せます。

 「子どもの遊びを共有するサイトを運営していても、実際に子どもと関わる機会がなくなったら子どもの視点から離れてしまう。ほいくるが子どもの姿から離れてしまうことがないようにしたいというのが、コドモガラクタラボを運営している大きな目的の1つです」

 子どもに失礼のない社会の実現。それがキッズカラーのビジョンだと雨宮さんは言います。 起業をきっかけに「保育とは何か」を突き詰めて考え、辿りつきました。

 「実際に保育士として現場にいたときは、とにかく毎日忙し過ぎて『保育とは何か』などと立ち止まって考える余裕はありませんでした。保育士は親よりも長い時間子どもに接することもあります。子どもの人生を左右する大きな存在なのに、あまりにも余裕がない。その現実をどうにかしたいとずっと悩んでいました」

 その差し迫った思いが、雨宮さんを未知の世界である「起業」へと駆り立てたのです。

 次回(中)は、雨宮さんが直面した保育現場での葛藤、キャリアの軌跡を追います。

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(取材・文/小林浩子)