全く問題がない“完璧”な家庭はありません。子どもの成長とともに訪れる課題に全員が「チーム」として取り組み、自分達らしい家族を形成すること――それが「ファミリー・ビルディング」の考え方です。幼児教育を通して6000人以上の子どもと接し、数多くの家庭をコンサルティングしてきた山本直美さんが、悩めるデュアラー世代へアドバイスします。第8回のテーマは「家族が増えたときのファミリー・ビルディング」。夫婦ふたりの生活から、子どもが生まれて3人家族へ。そして「3人家族」として慣れてきたころ、きょうだいが誕生したら……ひとりっ子からお兄ちゃん、お姉ちゃんになる第一子への目配り、気配りや、パパ・ママの負担の軽減方法など、家族が増えたときに心がけておきたいことについて、山本さんにアドバイスを聞きました。

 こんにちは。チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美です。

 結婚や出産など人生のステージが変わるにつれ、家族も変化していくものですが、なかでも生活が大きく変わるのはきょうだいが生まれたとき。たくさんの家族を見ていてもそう思います。ひとりっ子時代は、家族の中で「大人が2人、子どもが1人」というパワーバランスのため、たいていの生活は大人の都合で動かせます。夫婦でうまくコミュニケーションが取れていれば、慣れてゆくにつれ、家事や育児の役割分担もスムーズに行えるようになります。

 しかし、きょうだいが生まれると、家族の中で子ども達のエネルギーが一気に強くなり、生活の様子も変わってきます。子ども達それぞれの個性によって、食べ物の好き嫌いや、興味を持つこと、行きたいところなども違うので、親は目配りするのが大変です。

 家族が増えると、本格的に大人と子どものパワーバランスが対等になります。「目が回る」「猫の手も借りたい」……そんな声が聞こえてくるほど、いつも心に余裕がない状態が大前提。もちろん、きょうだいの年齢差も影響します。年子や2歳違いの子育ては本当に大変!という声もよく聞きます。自我が芽生えてくる年齢に妹や弟が生まれるのは大変ですが、見方を変えればそんな「大変な時期」も結果的に短くなる。一緒に育ってくれるというメリットもありますね。

お兄ちゃん、お姉ちゃんにどう配慮してあげればいい?

 きょうだいが生まれてからは、赤ちゃんのお世話も大変だけど、心配なのが上の子の状態です。大切なことは、「(かまってやれなくて)かわいそう」だとパパやママが思わないこと。「上の子どもがふびんだ」とよく親は言いますが、そう思ってしまうと逆に家族のバランスを崩すことがあります。

 下の子が生まれてから、どのように生活していくのかを子どもなりに受け入れる準備を始めたところで、周囲の大人がそう思ってしまうと、子ども自身も自分を「かわいそうな子」と感じて、赤ちゃん返りも加速しがちです。親は「皆で協力していこうね」と声をかけ、“同志”として赤ちゃんを一緒に育てる意識を持つことで、少しずつお兄ちゃん、お姉ちゃんとしての自覚が育っていきます。

 また、何とか短時間で説得しようと、「お兄ちゃんなんだから!」「お姉ちゃんなんだから!」を多用するのはできれば控えたほうがいいですね。子ども達の「ぼくは、お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだ!」という意識は本来、“えっへん!”と、得意げに表すこともあるぐらいモチベーションが高いものなんです。「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから!」と理由も言わずに止めるのは避けたいものです。

 「お兄ちゃんだからちゃんと待てるかな」「お姉ちゃんだから優しく声をかけてあげてほしいな」と、ちゃんと理由を伝えてあげることを忘れないでください。