Q. やるべきことを教えてください

―― 老後資金を蓄える方法としては、どんな優先順位で考えればいいですか?

山崎 まずは、必要な額をためることが大前提です。その次に、真っ先に検討したいのが「確定拠出年金(DC)」。それから、銀行よりもつ潰れる心配が少ないという意味で安全な“国”が扱う「個人向け国債」、さらに、投資をするなら「(コストの低い)投資信託」です。間違っても、コスト(やリスク)の高い投資信託、FX、投資用不動産などには手を出さないでください。

 確定拠出年金は安全なだけでなく、とにかくオトクなので、まずは利用できる上限まで利用したほうがいい。それから、給料の3カ月~1年分くらいを普通預金でためておいて、残りを個人向け国債や投資信託などで運用することをおすすめします。

【チェック! おすすめの老後資金のため方】

(1) 貯蓄と投資を組み合わせる
(2) まずは確定拠出年金を上限まで利用する
(3) 給料の3カ月~1年分くらいをため、残りの余裕資金を投資に回す
(4) 投資先は個人向け国債や(低コストの)投資信託
(5) コスト・リスクの高い投資信託、FX、投資用不動産には手を出さない

 親にとってのお金の課題としては「子どもの教育費」が大きいですが、自分達の老後のための資産を形成していく親の自立した姿は子どももしっかり見ています。それが、子どもの自立にもつながります。また、投資の内容はなるべくシンプルでいいんです。私の子どもはもう27歳の大人に成長しましたが、まだ小さくて夫婦共働きで子育てしていたときに、もしお金のことで時間を取られていたら、子どもと遊ぶ時間がなくなってつまんなかったでしょうね(笑)。子育て中の皆さんは、ぜひ余計な時間や手間をかけないで老後資金を確実にためる仕組みづくりを始めてみてください。

ユーザーから見て気になる「オトク感」「安心感」

―― 以上、専門家にお話を伺いました。

 さて、編集部では、「お金を運用する」と聞いたときに多くの人が気になる2つの疑問に着目しました。それは、

① もうかるの?
② リスクはないの?

です。そこで今回の特集では、「どのくらいもうかるのか(オトクなのか)」「リスクはどのくらいあるのか」という視点から、老後資金をためる手段を見ていきます。

 リスクについては、例えば「とにかく元本割れしたくない」「たとえ1%でもリスクがあるならイヤ」という人には、「安心度レベル」が一番上「レベル5」をおすすめします。賢くリスクを取りつつ運用してみたいなら、「レベル3」を。特集で紹介するのはここまでで、「レベル2~1」「レベル0」は取り上げません。

 次回より詳しくお伝えしていきますので、お楽しみに!

朝倉智也
モーニングスター代表取締役社長。1989年慶應義塾大学文学部卒業、銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。その後、ソフトバンク財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社設立および上場準備担当。1998年、モーニングスター設立に参画。米国モーニングスター勤務を経て、2004年より現職。著書に『ものぐさ投資術』(PHPビジネス新書)、『マイナス金利にも負けない究極の分散投資術』(朝日新聞出版)など。

楠 雄治
楽天証券代表取締役社長。1986年広島大学文学部卒業。日本ディジタルイクイップメント(現・日本HP)入社。1996年米国シカゴ大学経営大学院修了(MBA)。1999年DLJディレクトSFG証券(現・楽天証券)の立ち上げに参画し、執行役員マーケティング部長、最高執行責任者(COO)などを経て、2006年10月より現職。楽天常務も務める。

山崎 元
経済評論家。専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表取締役。東京大学経済学部卒業、三菱商事入社。野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て現職。雑誌連載、テレビ出演多数。著書に『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社、共著)、『確定拠出年金の教科書』(日本実業出版社)など。

(文/西山美紀、日経DUAL編集部)