悩み続ける親こそが、社会を変える

 園は、現在1歳児から5歳児まで134人。認可園のため、申し込みは自治体から行う。1歳児~3歳児はそれぞれ20~28人、4、5歳児はそれぞれ30人ちょっとの大型の園だ。しかし、大型と感じさせない落ち着きと個別のケアが感じられるのは、職員の配置が充実しているからだろう。

 スタッフは、正規職員が22人。アシスタントなどそれ以外のスタッフも含めると約50人。1歳児は成長に応じて2組に分けて行動や食事をしたり、他のクラスも常に複数の先生が子ども達を見守っている。ちょうど給食の時間に訪れた3歳児のクラスでは、約30人の子どもに対して4、5人の先生が一緒に席についたり、配膳サポートをしたり、食事の前の歌の伴奏をしたりしており、先生が大きな声で叫ぶことも子ども達が走り回ることもなく、落ち着いて食事準備がなされていた。

昼食の時間も、充実したスタッフ配置で子ども達は落ち着いて準備を待つ
昼食の時間も、充実したスタッフ配置で子ども達は落ち着いて準備を待つ

 仏教系の幼稚園や保育園の研修会が年に8回、それ以外にも年数回の研修や保育見学にスタッフが交代で参加し、学ぶ機会を大事にしているという。

 「どの園からも必ず『なるほど』と思う学びがあります。それに、他の園を見ることで自分の園への理解も深まり、モチベーションにもつながります。若い先生から勤続20年以上の先生まで、長く働いてくれる先生が多いですよ」(戸田園長)。

 通常保育は7時半から18時半。19時半までは延長保育を行っている。家庭との関わりを大事にし、毎日のコミュニケーションはもちろんのこと、気になる家庭があれば個別に面談をして、家庭の事情から悩みまでを聞き、状況を把握してアドバイスする。家庭に踏み込まない園も多い昨今で、子ども達のためとあえて家庭の事情に入り込んでいくのも、その後のサポートをしっかりする準備があるからだ。

 「働いているお母さん達は、仕事と子育ての両立などで悩んでいます。でも、お母さんが悩んでいるということは、子どもに心が向いているということでもあるんです。『もういいや』と思ってしまったら終わり。そうして真剣に向き合おうとしている親の思いが、子どもに伝わるんです。親は悩まないといけない。そして、その親の真摯な悩みが未来の社会を変えていくんです」

 働く親にとっては耳が痛くなるような冒頭の話は、子どもとその親への大きな愛やサポートがあるからこそだと、改めて感じる戸田園長の言葉。園長はもちろん、保育士達の子ども一人一人に向かう姿勢からもそれは伝わってくる。

 「保育園に預けて楽だった」。それだけで終わらせてはいけない親の役割を改めて考えさせられた園だった。

子ども達の状況に合わせて、個別に寄り添うスタッフの姿があちらこちらに見られた
子ども達の状況に合わせて、個別に寄り添うスタッフの姿があちらこちらに見られた

DATA
妙福寺保育園
東京都練馬区南大泉5−6−47
Tel:03-3922-3368

(文・写真/岩辺みどり)