他の病気に比べると、見逃されやすい子どもの目の病気。小さなうちは子ども自身が目の異常に気づくことは難しいので、「目つきがおかしくないか」「視線が合っているか」「テレビに近づき過ぎていないか」など、親が気づいてあげることが大切です。そして小学生以降になると、子ども同士で遊んだり、留守番をしたりする機会も増え、親の目の届かないところで、テレビやスマホ、ゲームに接する時間が長くなってしまうことも。目への負担が気になる人も多いのではないでしょうか。

 子どもの目の健康を守るために、親が最低限知っておきたい情報を紹介していく「子どもの視力と眼がね」特集。幼少期に気をつけておきたい目の異常や、0歳から自宅で簡単にできる子どもの目の検査法について解説した前回に引き続き、第2回は小学生の近視をテーマに、気になる予防法や最新治療法を国立成育医療研究センター・眼科の仁科幸子先生による解説でお届けします。

【子どもの視力と眼がね 特集】
第1回 「見る力」は8歳までに決まる 異常は早期発見が鍵
第2回 子どもの近眼リスク片親が近視で2倍、両親で5倍 ←今回はココ
第3回 失敗しない、子どものファースト眼がねの選び方
第4回 将来の選択肢 コンタクトレンズ&レーシック新事情

 DUAL読者の中には、小学校中・高学年あたりから視力が下がり、眼がねデビューをしたという人も少なくないのではないでしょうか。

 文部科学省が発表した平成27年度学校保健統計によると、裸眼視力が1.0未満の小学生は30.97%を占め、調査を始めた昭和54年度の17.91%から増え続け、過去最高を更新しました。カラーテレビの普及をはじめ、PCやタブレット、スマホ視聴の影響などが原因として指摘されています。

※「平成27年度学校保健統計」(文部科学省)をもとに日経DUAL編集部が作成
※「平成27年度学校保健統計」(文部科学省)をもとに日経DUAL編集部が作成

 しかも、「近視になる年齢は年々低下しています」と話すのは、国立成育医療研究センター・眼科の仁科幸子先生。気になる子どもの近視について聞きました。

両親ともに近視の遺伝因子を持つと、子どもに受け継ぐ可能性は5割!

Q. Q.両親ともに近視です。子どもに遺伝しますか?

A. 片方の親が近視だと2倍、両親ともに近視だとリスクは5倍になります。

 近視には「遺伝因子」と「環境因子」の両方が関与しています。

 子どもが近視になるリスクは、両親ともに近視ではない子どもに比べて、片親のみが近視だと2倍以上、両親ともに近視だと5倍以上に上がるという研究報告があります。

 遺伝因子としては、眼軸の伸びやすさ(次の項目で解説)があります。環境因子としては、近くのものを長時間凝視する、暗いところでものを見る、動くものを見るといった機会が多いと、近視が進む可能性があります。

親の近視は子どもに遺伝。両親ともに近視だと、両親ともに近視ではない子に比べて、5倍以上近視になるリスクが上がるという研究結果も。(C)PIXTA
親の近視は子どもに遺伝。両親ともに近視だと、両親ともに近視ではない子に比べて、5倍以上近視になるリスクが上がるという研究結果も。(C)PIXTA

アジア人は近視になりやすい? 8歳から16歳くらいに近視は進行

Q. Q.近視の目では何が起こっている?

A. 目の奥行きが長くなり、網膜の手前でピントが合っている状態です。

 目に入ってきた光は、目の一番奥にある網膜に焦点が合うことで、見える仕組みになっています。近いところを見るときは水晶体が厚く、遠いところを見るときは水晶体が薄くなる調節機能によって、近くを見るときも遠くを見るときも、網膜にピントを結ぶことができます。

 眼球の奥行きを「眼軸長」といいます。眼軸長は2歳までに急速に伸び、その後8歳くらいまでに徐々に伸びていきますが、その分、水晶体の屈折力を減らす(=焦点の距離が伸びる)ことで網膜に焦点が合うようにバランスをとっています。

 しかし、水晶体の変化は8歳までで、それ以降は水晶体の屈折力は変わりません。8歳以降に眼軸長が伸びると、網膜の手前でピントが合うことになり、ぼやけて見えます。これが近視です。

 8歳から16歳くらいの間が、近視が進みやすい時期です。

 眼軸が伸びる要因としては、遺伝的な要因と、環境的な要因が考えられていますが、一般的にアジア人は眼軸が伸びやすいといわれています。伸びた眼軸は元に戻ることはないので、一度進んでしまった近視は治りません。

【次のページからの内容】
・近視の予防 唯一の抑制効果は「外遊び」
・受験などのストレスにより、視力が一時的に低下することも
・感受性が強い子どもの網膜や水晶体を守る日常の対策
・子どもの眼がねデビューで親が気をつけたいこと