他の病気に比べると見逃されやすい子どもの目の病気。小さなうちは子ども自身が目の異常に気づくことは難しいので、「目つきがおかしくないか」「視線が合っているか」「テレビに近づき過ぎていないか」など親が気づいてあげることが大切です。そして小学生以降になると、子ども同士で遊んだり、留守番をしたりする機会も増え、親の目が届かない所で、テレビやスマホ、ゲームに接する時間が長くなってしまうことも。目への負担が気になる人も多いのではないでしょうか。

 そこで日経DUALでは「子どもの視力と眼がね」をテーマに、子どもの目の健康を守るために、親が最低限知っておきたい情報を紹介していきます。第1回では、子どもの視力の発達メカニズムをはじめ、幼少期に気をつけておきたい目の異常、0歳から自宅で簡単にできる子どもの目の検査法について、国立成育医療研究センター・眼科の仁科幸子先生にお聞きします。

【子どもの視力と眼がね 特集】
第1回 「見る力」は8歳までに決まる 異常は早期発見が鍵 ←今回はココ
第2回 子どもの近眼リスク 片親が近視で2倍、両親で5倍
第3回 失敗しない、子どものファースト眼がねの選び方
第4回 将来の選択肢 コンタクトレンズ&レーシック新事情

8~9歳までは視力の発達期 異常を放置すると正常な視覚の発達が妨げられる

Q. 生まれたばかりの赤ちゃんは、どれくらい見えていますか?

A. 物の形がぼんやりと分かる程度。8~9歳ぐらいで成人並みの視力に成熟します。

 人間の目は生まれたときからしっかりと見えているわけではなく、適切な視覚刺激を受けることで、年齢とともに発達していくものです。

 生まれたばかりの赤ちゃんの視力はおよそ0.01〜0.02で、物の形がぼんやりと分かる程度です。生後2~3カ月ごろになると、固視・追視(物をじっと見つめる・目で追う)という反応が見られ、両目で物を立体的に捉える機能が急速に発達します。

 2歳までに0.3以上、3歳半くらいで0.5以上、4〜5歳で1.0、視覚が成熟して成人と同じレベルに達するのは8〜9歳です。

 8〜9歳までの視力が発達する時期に、目の病気や、強い遠視や乱視、斜視などがあると、視力の正常な発達が妨げられ、後から治療を行っても思うように効果が上がりません。

 特に0〜3歳は目の感受性が非常に高く、外からの視覚刺激によって網膜から視神経、その先の大脳の視覚野が急成長する大切な時期。「目つきがおかしい」「視線が合わない」など、目の症状に気づいたら早期に眼科を受診することが大切です。

生まれたばかりの赤ちゃんの視力はおよそ0.01~0.02。その後、視覚が徐々に発達し、成熟して成人と同じレベルに達するのは8~9歳
生まれたばかりの赤ちゃんの視力はおよそ0.01~0.02。その後、視覚が徐々に発達し、成熟して成人と同じレベルに達するのは8~9歳

50人に1人の割合でおこる「弱視」は早期発見と治療が大切

Q. 気をつけたい子どもの目の病気にはどんなものがありますか?

A. 50人に1人の割合でおこる「弱視」は、できるだけ入学までに治療を完了しましょう。

 視力が発達する時期に強い遠視や乱視で網膜の中心部にピントが合わず、鮮明な画像が映っていなかったり、斜視が原因で斜視の目が抑制されていると、大脳の視覚野の働きが十分に成長しないため、視力の発達が妨げられて弱視になります。弱視は近視のように眼がねで矯正しても視力が出ないのが特徴です。

 弱視は子どもの50人に1人と、比較的多く見られる病気です。強い遠視や乱視、斜視が原因で起こる弱視の場合、3歳児眼科検診で見つけることができれば、小学校入学までに治療を完了することができます。目の感受性が高い時期を過ぎてしまうと、弱視治療に対する反応が悪くなり、十分な回復が見込めないことがあるので、早期発見が非常に大切です。

 弱視にはおもに以下のようなタイプがあります。

(1)形態覚遮断弱視…乳幼児期に視覚刺激が遮断されることで起こる、片眼または両眼の視力障害。
原因となる疾患→白内障、角膜混濁、瞳孔閉鎖、眼窩腫瘍など。
(2)斜視弱視…斜視があるために、斜視眼が抑制されて起こる視力障害。
(3)不同視弱視…左右のうち片眼に屈折異常があることで生じる片眼の視力障害。
(4)屈折異常弱視…両眼の屈折異常による両眼の視力障害。

 弱視の重症度としては(1)>(2)>(3)>(4)の順となり、重症の弱視ほど早期発見・治療が肝心です。形態覚遮断弱視は1万人に2~3人と割合は少ないものの、強度の弱視を形成するため、0歳で発症した場合には2~3カ月以内に治療を開始する必要があります。

 0歳で発症した斜視もやはり、3カ月以内に治療を開始しないと、弱視を起こしたり、両眼で物を見る機能に支障をきたします。

 2歳以降に生じた斜視弱視、不同視弱視、屈折異常弱視など大部分の弱視は、3歳児眼科検診で発見されれば治療可能です。これらの弱視は子どもの50人に1人と、高い頻度で見られます。

【次のページからの内容】
・片目だけの弱視は見過ごされてしまうことも多い
・3歳児眼科検診の重要性 弱視のまま成人すると両眼の視覚障害リスク増
・家で親が簡単にできる子どもの目の検査方法
・目の発達が著しい未就学児、スマホ動画の見過ぎと目への影響