皆さん、こんにちは、治部です。台風が接近し、明け方から強い雨が降る日に書いています。今日は4歳の娘と一緒に家で仕事。この原稿を無事に書き終えることができるといいのですが……。

 これまで本連載では、保育園などの子育て支援政策について書いてきました。子どものためにもっとお金を使ってほしい……と希望し、声を上げることは、政治参加への第一歩です。

「もっと子どもに予算を使う社会を作ろう!」と考える人の味方になる本

小さなお孫さんとの生活で、改めて子どもの大切さと子育ての大変さを実感されている八代尚宏先生。「次世代のために社会保障を改革する必要がある」とおっしゃいます
小さなお孫さんとの生活で、改めて子どもの大切さと子育ての大変さを実感されている八代尚宏先生。「次世代のために社会保障を改革する必要がある」とおっしゃいます

 今回は「もっと子どもに予算を使う社会を作ろう!」と考える人の強い味方になる本をご紹介します。『シルバー民主主義:高齢者優遇をどう克服するか』(中公新書)。著者は経済学者の八代尚宏先生です。八代先生は上智大学や国際基督教大学教授を経て、現在は昭和女子大学グローバルビジネス学部で特命教授を務めています。

 読者の皆さんは「シルバー民主主義」という言葉を聞いたことがありますか? 本書の「はじめに」に、次のような解説があります。

 “政治家が当面の選挙に勝つために、増える一方の高齢者の既得権を守ろうとする「シルバー民主主義」”
 (『シルバー民主主義』「はじめに」より)

 誤解されやすいので、最初にお伝えすべきなのは、これは「高齢者の存在が悪い」とか「長寿が悪い」という主張ではないということです。高齢者層のご機嫌取りをするため、高齢者の短期的な利益のみを重視する政治や政策が悪いのです。

 シルバー民主主義の問題を取り上げると、同じ反論に出合います。「長生きするなと言うのか」「お年寄りを支援するなと言うのか」、と。しかし、問題の本質はそこにはありません。DUAL読者の皆さんには、こうした非合理的な批判に反論する根拠を、本書から学んでいただきたいと思い、そのエッセンスをご紹介します。