「保育の質」というとき、保護者がつい考えてしまうのが、園の運営やそこで働く人達の「質」がどうなっているか、ということ。でも保育園の持つ雰囲気や環境は、保育を提供する側だけが形成するものではありません。大暴れの子ども達やモンスターペアレンツ、行政からの圧力や増えるサービス残業。保育園を支えてくれている保育士の先生達のご苦労とは、実際はどのようなものなのでしょうか? 「現役保育士の座談会『保護者には何でも言ってほしい』」に引き続き、東京都内・公立保育園の保育士として13年の経験を持つ、中堅保育士お二人、加藤学さんと石川怜子さん(どちらも仮名)に「聞くのがちょっと怖い!? ぶっちゃけ本音トーク」をしてもらいました。座談会の後編をご紹介します。

【「今、保育園が危ない」特集】
第1回 「園の運営に対して不安に感じる」親は50.8%
第2回 「保育の質」は下降する!? 今、親にできること
第3回 保育の質を改善するには、親達の「つぶやき」が必須
第4回 保育園“モンペ”にならない上手なクレーム術とは
第5回 現役保育士の座談会「保護者には何でも言ってほしい」
第6回 公立園と民間園では雲泥の差。厳しい「保育士事情」 ←今回はココ
第7回 わが子を保育園で亡くした夫婦 事故防止策を作成

乳児クラスでは、昼休み中でも子ども達が泣き出せば、休憩はもちろん中断

東京都内の認可保育園に勤める保育士の石川怜子さん(仮名)
東京都内の認可保育園に勤める保育士の石川怜子さん(仮名)

―― 保育士さんの仕事は、子ども達と向き合うだけでなく様々な業務があり、休み時間さえ取りづらいという印象があります。実際はどうなのでしょうか? 特に乳児クラスの担任の先生は、いつも園児を抱っこしなくてはならず気が抜けないのでは? トイレに行けなくて膀胱炎になった……なんてことはありませんか?

石川 そこは「健康第一」で無理をせず、「もう限界だからちょっと代わってもらえる?」と言ってお手洗いに駆け込んでしまうことも(笑)。乳児は複数の保育士で担任しているので、お互いに声を掛け合っています。でも、思い通りに休息を取るというわけにはいきませんね。

加藤 それでも乳児クラスは保育士だけで昼食を取る時間が設けられているので、その時間は休息は取りやすいとも言えます。

石川 そうですね。保育士自身の食事と休憩を合わせて1時間ほど、子ども達のお昼寝中に交代で休みます。その間は、私の園では連絡帳の記入などの作業はせず、保育から離れてホッと一息つく時間になっています。もちろん子ども達の安全確保が第一ですから、お昼寝中に子ども達が起きて泣いてしまったりした場合は休憩は中断。前に後ろに子どもを抱っことおんぶして、一人で2人の子どもをあやすこともあります。

―― 3歳以上の幼児クラスになると、先生も園児と一緒にお昼を食べますよね? 自分の休憩時間は取れますか?

加藤 取れません。子ども達が昼寝をしている間が、唯一保育から離れる時間ではありますが、そもそも子ども達はすぐには寝ませんし、昼寝の時間も乳児より短くなります。子ども達が寝ている間も、行事の準備など何かしらの打ち合わせが入ったり、翌日の保育の準備に追われたりしているのが実情です。休憩時間は皆無だと言ってもいいかもしれません。

<次ページからの内容>
・ 職場で感情的になるのは保育士としてNG
・ 家では“いい子”なのに、園では荒れる子の本心とは?
・ 民間保育園の保育士は昇給しにくく、生活もギリギリになりがち
・ 保育士不足を解決するには給与改善だけでは足りない

次ページから読める内容

  • はっきり言って休み時間はゼロ。イライラすることもあります!
  • 自分の子どもには怒っても、仕事で“切れる”のは絶対NG
  • どっちが「ありのまま」の姿? 家でいい子なのに園では荒れる子
  • 保育士を目指した仲間6人中半数が保育士以外の道を選択
  • 給与だけじゃない。保育士の仕事が改善されなければ子どもの居場所がなくなる