「子どもの勉強はリビングでさせたほうがいいのかな?」「机や照明、どんなものがいいの?」「片付けが上手じゃないと、知性の発達にも悪影響があるのだろうか」――。そんな疑問を持ったことはありませんか。今回DUALでは、ずばり「頭が良くなる子」が育つ部屋や家づくりについて、特集で取り上げます。子どもが集中して生き生きと勉強をしたり、家族のコミュニケーションが活発になったりするために、家ができることはあるのでしょうか。多くの小学生の家を訪れた経験のある家庭教師や、カリスマ教育者、整理収納アドバイザーなどの方々に取材をしました。

 第3回の今回の記事では、百ます計算など「隂山メソッド」と呼ばれる学習法で有名な、『子どもを賢く育てる暮らし方』の著書もある教育者の隂山英男さんのお話を紹介します。

【頭が良くなるリビング&子ども部屋づくり】
第1回 西村則康 勉強ができる子は家を見ただけで分かる
第2回 学習場所や本棚の正解は? 勉強ができる子が育つ家
第3回 隂山英男 学力アップのコツはリビングの使い方 ←今回はココ
第4回 中学受験に合格した子の家 家族との交流が鍵
第5回 片付け上手は成績もアップ プロの整理術
第6回 子どもが育つ家づくり プロに聞く新築や改築のコツ

「孤独に黙々と」では意外と学力は伸びない

隂山英男(かげやま・ひでお) 1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒業、教師に。反復学習で基礎学力向上を目指す「隂山メソッド」を確立する。「百ます計算」に代表される「徹底反復シリーズ」などが有名。文部科学省中央教育審議会特別委員、大阪府教育委員長などを歴任。現在、立命館小学校校長顧問
隂山英男(かげやま・ひでお) 1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒業、教師に。反復学習で基礎学力向上を目指す「隂山メソッド」を確立する。「百ます計算」に代表される「徹底反復シリーズ」などが有名。文部科学省中央教育審議会特別委員、大阪府教育委員長などを歴任。現在、立命館小学校校長顧問

 日本では長らく、「学習は孤独に黙って鉛筆を動かす。根性を出してやる」ということが善しとされてきました。そのために子ども部屋で一人で勉強することが理想とされてきたのです。でも、この「孤独に黙々と」というのが、意外と学力が伸びなかったりする。それに代わって、近ごろ推奨されているのが「リビングでの学習」です。

 私の子どもが小さかったとき、近所の子ども達が家に来て、リビングで皆が和気あいあいと学習していました。同様に家族がいるリビングで学習すれば、疑問に思ったことについてその場で会話するなど、わいわいと意欲的に学習できます。目標をクリアして家の人に見てもらう、褒められる・・・。この「意欲的に」ということが、学力が伸びる一番の秘訣です。よく「勉強ができるようになるため、意欲的に取り組んでほしい」という声を聞きますが、意欲的であることと学力が向上することは一体のもの。前向きに学ぶことで自然と、学力アップしているのです。

 少し極端な例かもしれませんが、以前、小学校2年生の生徒が、漢字を覚えられる「ニンテンドーDS」のゲームをしているうちに、半日で120文字覚えてしまったことがありました。なんでそんなに覚えられたのかと聞くと「面白かったから」。私も昔は「ゲームで学習?」と訝しがった時代もありましたが、結局、楽しければ子どもは自然にどんどん学んでいくものなのです。

 昔から理想の学ぶ姿として、二宮金次郎の銅像が挙げられてきました。薪を背負って本を読んでいる。働きながらも苦労して、努力して勉強していた、という印象で語られてきました。でも私は「きっと、薪を背負ってまで読みたいような、薪の重さも忘れてしまうような、よほど楽しい本を読んでいたのだろう」と思っています。

 以前、世界中の偉人が育った家を研究している、という人と話したことがありました。様々な家庭があったようでしたが、共通点として「天井が高い」家が多かったということでした。天井が高いということは、開放感があるということ。子どもにとっては明るく、心地よい空間が学習に適しているということなのかもしれません。

 それでは、リビングで勉強するときに、あったほうがいいものは具体的に何でしょうか。

<次ページからの内容>
・学力向上のためリビングにあったほうがいいもの
・時間の感覚を大切に
・本好きの子どもを育てるには
・玄関は家の顔。こざっぱり心地よく