子どもの教育や将来を考え、親子で日本を飛び出す海外移住に興味を持つ人は多いでしょう。海外で会社員として働く形態には、主に「海外駐在」と「現地採用」の2種類があります。

 シンガポール在住ファイナンシャル・プランナー(FP)花輪陽子さんによる新連載。グローバルライフプランを現実的に考えるために、あらかじめ知っておきたい、海外移住にまつわる「憧れ」と「現実」。この連載では、現地採用の落とし穴や気になる出産、子育て事情を、海外で実際に子育てをしているお金のプロの視点から伝えていきます。

 ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。私は2015年の6月からシンガポールで夫と2歳の子どもと3人で生活をしています。約1年海外で生活をしてみて感じることは、日本と比べると物価がずいぶん違うということです。

 日本があまり経済成長できなかった失われた20年の間に、世界や北米などは毎年2%前後、シンガポールは高い率で成長し続けていました。この間に随分差が付いてしまったのだと痛感します。家賃相場を見てみても、2ベッドルーム(リビングとベッドルームが二つで日本でいう2LDKに近い)のファミリー向け物件はシンガポールでは30万円前後、サンフランシスコでは50万円前後もかかります。

 グローバル化により、海外で働くことがいっそう身近になったこともあり、最近では、ネットなどの求人で海外での仕事を見つけて思い切って海外移住を決意する人がいるということをよく聞きます。

 「給料も上がるし、海外での生活は楽しそう。」―― 安易に飛びつきそうになりますが、「でも、ちょっと待って!」。先ほど触れたように、目先の条件からは見えない家賃負担を始め、物価の差、社会保障などの違いから、想像以上に固定費がかかり思わぬ移住貧乏にもなりかねません。

 また、現地採用で華々しい成功を遂げたように見えても、実際には数年働いたのち、日本に戻ってから再就職で苦労するというケースもあり、憧れや夢で大きな決断をする前に、生活コストや子育て環境についても十分に検証することが大切です。

 今回は海外での収入と暮らしぶりがどうなるのかを、シンガポールでローカル採用の場合をメインにシミュレーションしてみたいと思います。

ファミリー向け物件はシンガポールでは30万円前後
ファミリー向け物件はシンガポールでは30万円前後