「民主主義のための戦争」には首を突っ込まない

 トランプ氏の政策を一言で表現すれば、アメリカの国益を第一とすること。仮にそれが実行されたら世界にどんな影響が及ぶのでしょうか。

 気がかりな点として三浦さんがまず指摘するのは、彼が時代の趨勢に逆行する保護貿易主義者だということです。自由貿易のグローバルな枠組み作りを目指すTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には、アメリカの製造業を損なうものだとして強硬に反対してきました。大統領に就任したら脱退する意向も、すでに表明しています。一番の大国が抜けるとなれば、TPPの構想自体が頓挫する可能性もあるでしょう。

 過激な物腰から、彼が戦争を起こすことを恐れている人もいるかもしれません。しかし三浦さんによれば、さほど心配しなくてもよさそうです。

 「いいカッコをしたいものだから、つい勢いで戦争を始めてしまう可能性がないとはいえません。しかし、トランプ氏が表明している外交政策自体は、案外まともで穏当だと思います。具体的には海外の局地的な戦争には首を突っ込まないというのが、彼の基本的な考え方です

 アメリカはこれまで「世界の警察」よろしく、文字通り世界中の戦争に介入してきました。しかし、それが適切な選択だったのかと疑問を投げかける人も少なくありません。トランプ氏もその一人ですが、彼の場合はベトナム戦争も近年のイラク戦争、アフガニスタン戦争も、「アメリカに利益をもたらさなかった」のだからやるべきではなかったというスタンスです。

 「アメリカの経済的覇権を維持することを重視するトランプ氏は、『民主主義のための戦争』に国費を投じることに否定的。それはアメリカ経済のためにはいいことですが、結果として見捨てられる形になる紛争地域が出てくるかもしれないのが、不安材料だと思います

――気になる日本への影響は後編で。

(取材・文/手代木建)