ダイバーシティー、女性活躍の推進策の一環として、テレワーク制度を導入する企業が増えている。しかし、コストや運用の難しさを懸念し、二の足を踏んでいる企業も少なくないようだ。

 ネットワンシステムズは、2016年1月、日本テレワーク協会が「テレワークを導入・活用した、またはテレワークの普及に貢献した企業・団体」を表彰する「テレワーク推進賞」において、奨励賞を受賞した。同社では2011年にテレワーク制度を導入。全社員の6~7割が利用するまでに浸透している。

 「残業時間の抑制、ペーパーレスによる経費削減、出張費・移動費のコスト削減などの効果が数字で表れているほか、社員同士のコミュニケーションの量・質が高まった。育児中の社員が早いタイミングで復職できる、時短勤務ではなくフルタイム勤務で働ける、といったメリットも生まれている。コストはかかったが、プラス面のほうが圧倒的に多い」と、人事部長の下田英樹さん。

 具体的にどんな変革を行ったのか、テレワーク制度導入に伴う障害や課題をどう乗り越えてきたかを語っていただいた。

<ネットワンシステムズ株式会社>
 東証一部上場のIT企業。世界の最先端技術を取り入れた情報インフラ構築とそれらに関連したサービスの提供を行う。設立/1988年、本社/東京都千代田区 従業員数(連結)/2252人(2016年3月31日現在)

対象者も利用日数も、制限を設けずにスタート

ネットワンシステムズ・人事部長の下田英樹さん
ネットワンシステムズ・人事部長の下田英樹さん

 ネットワンシステムズは、経営戦略として「ICTを利活用したワークスタイル変革」を推進。仮想デスクトップ、ビデオ会議、Web会議、チャット、画面共有などの各種コラボレーションシステムを全社員に導入している。ワークスタイル変革の一環として、また、「成果重視」の人事制度にシフトしていく狙いもあり、「在宅勤務」「リモートワーク」をセットにした「テレワーク制度」を2011年にスタートした。

 他社と比べて特徴的なのは、最初から利用制限を設けずにスタートした点にある。一部の社員を対象にするのではなく、最初から全社員が対象。利用日数も無制限だ。

 「人事としては、利用条件を絞った『スモールスタート』を考えていたんですが、経営との議論を踏まえ制限を取り払いました。工夫できる余地を最大限残し、想定しなかった事例も引き出しながら、横展開していこう、と。もちろん問題も生じましたが、5年経った今も当初の方針のまま運用しています」(下田さん)

 導入後、「リモートワーク」を活用し、営業職の自由度が高まった。会社に戻る必要がなく、移動時間を削減できたことで生産性がアップ。一方、「在宅勤務」については、マーケティングや経営企画など、利用しやすい職種から徐々に広がっていった。