スムーズな導入のカギは、「既存制度の整理」と「ポジティブなメッセージ発信」

 利用制限のないテレワーク制度を導入するに当たり、人事担当者はどんな準備をしたのだろうか。

 「厄介だったのは人事制度の見直しです。徹夜連続勤務、直行直帰、シフト勤務など、様々な勤務制度があったのですが、テレワーク制度とどう共存させるかについて頭を悩ませました」(下田さん)

 当初は、「裁量労働制」を主任クラスまで拡大しようとしていたが、労使協定を取り付けられなかったという。エンジニアが6割を占める組織では、一部の社員に仕事が集中したり、地方と都市圏ではリソースに差があったりするという現状がある。そうした環境で一律の時間外労働を見なしていく制度を導入するのは士気に関わる、時期尚早である、という声が上がり、断念した。

 「何より、『裁量労働制の導入には、人件費カットの狙いがあるのではないか』というネガティブな捉え方をされてしまった。しかし、すぐに方針を変更し、フレックスタイム制度の導入に切り替えたんです。これはうまくいきました」(下田さん)

 フレックスタイム制度の導入に当たっては、勤怠管理がずさんになったり、社員が朝出社しないことで業務に支障を来たしたりすることが懸念されていた。しかし、「一人ひとりが工夫することで働き方を変革していく」というポジティブな姿勢でメッセージを送り、社内のコンセンサスを得ることができたという。

 そして、制度導入と同じタイミングで、オフィスの移転、オフィスレイアウトの変更、フリーアドレス制(固定席を設けず、社員が自由な席で仕事をするスタイル)への転換、ツールの拡充を実施。社員の間で「変わっていく」というモチベーションが高まり、意識変革が一気に進んだ。

 こうして制度とオフィス環境を一新。しかし、当然ながら不安や課題も生じた。最も大きいのは「コミュニケーション」の問題。フリーアドレス制やテレワークにより、これまで当たり前のように目の前にいたメンバーと顔を合わせる機会が減ることになる。

 しかし、チャットツールやビデオ会議システムなどを活用することで、コミュニケーションの質・量が以前より高まったという。ネットワンシステムズでは、どのようなツールをどう活用しているのか、後編で紹介する。

(取材・文/青木典子)