この5つのシーンが特に危険! 知っておきたい最重要ポイント

栗並 私は「先生達を信じよう」と自分に言い聞かせて納得しようとしてしまった。保育園のあるべき姿が分からなかったため、自分がモンスターペアレンツになっているのか、妥当な意見を伝えているのかの判断がつかなかったのです。そこのラインをはっきりさせたい。そんな思いもあって策定に関わったのが、このガイドラインです。

ガイドラインには、保育施設内で重大な事故が起きやすい場面や状況を、現場や専門家の知見をもとに、①睡眠中、②プール活動・水遊び、③誤嚥(食事中)、④誤嚥(玩具、小物等)、⑤食物アレルギーの5つに分け、それぞれに関する注意事項をまとめています。保育園に子どもを預けている人には、ぜひ読んで知っておいてほしいことばかりです。例えば、それは以下のような内容です。

【「事故防止のための取り組みガイドライン」の一部】
① 【睡眠中】
「うつぶせ寝は(医学的な理由で医師から勧められている時を除き)させない」
「やわらかい布団やぬいぐるみを使わない」
「(よだれかけのひもなど)ひも類をそばに置かない」
「定期的に職員が呼吸、体位、睡眠状態を確認する」
② 【プール活動・水遊び】
「監視員と指導員を分ける」「十分な監視体制がとれない場合は、プール活動の中止も選択肢とする」
③ 【誤嚥(食事中)】
過去に窒息、誤嚥が起きた「白玉風のだんご」や「丸のままのミニトマト」は誤嚥の可能性について保護者に説明し、使用しないことが望ましい
④ 【誤嚥(玩具・小物等)】
髪ゴムの飾り、キーホルダー、ビー玉や石など、子どもが持っていたり身につけているもので誤嚥につながるものの除去について、保護者にも協力を求める
⑤ 【食物アレルギー】
「食物アレルギーの子どもの食事を調理する担当者を明確にする」
「食器、トレイの色や形を明確に変える」
「除去食、代替食は普通食と形や見た目が明らかに違うものにする」

栗並 例えば、プールの活動中に先生が1人しかいなければ安全の確保は難しい。でも、保育士さんによっては優しさから「子ども達にプール遊びをさせてあげたい」とプールの活動を実施してしまうかもしれません。でも、このガイドラインを見れば、それは安全対策としては不適切な行為だと判断できます。反対に、保護者の側から「プールを中止するなんて子ども達がかわいそう!」などと言うことも、絶対に間違っていると言いたい。

子どもが園に持って行きたがる可愛い飾りのついた髪ゴムや、スーパーボールなどのおもちゃも、0~1歳の子が口に入れてしまえば誤嚥の原因になります。親としても、日ごろの注意が必要だということがはっきりと分かります。

栗並 ガイドラインに精神論は必要ありません。「しっかり見守る」「気をつける」といった曖昧な記載は避け、具体的にどう行動すべきかに焦点を絞りました。このガイドラインは、保育園の質を見極める指標になるはずです。通っている保育園で守られていないことがあれば、このガイドラインを見せて先生に相談するなどして活用してほしいと思います。

どんなに安全対策をしていても、事故が起きる可能性はあります。えみさんは「事故発生時のガイドライン」にも策定委員として関わりました。

栗並 死亡事故が起きたとき、どうしていいか分からなくなるのは、親だけではありません。私の息子のケースでも、事故直後は園も自治体も、どう対応すればいいか分からず右往左往していた様子がうかがえました。でも、事故直後から適切な形で事実確認をして記録を残さなければ、人の記憶は薄れてしまい、どんどん曖昧になります。再発防止のためには正確な事実に基づいて検討することが不可欠です。だから、事故直後からのあるべき対応について、あらかじめ国として指針(ガイドライン)を示しておく必要があると考えました。

誰しも最悪の事態のことは考えたくもないかもしれません。でも“起きてから”ではなく、“事前に予測すること”が大事です。次のページでは、事故が起きたときに保護者がどう対応すればいいかという指針をお伝えします。