「保育の質」というとき、保護者がつい考えてしまうのが、園の運営やそこで働く人達の「質」がどうなっているか、ということ。でも保育園の持つ雰囲気や環境は、保育を提供する側だけが形成するものではありません。大暴れの子ども達やモンスターペアレンツ、行政からの圧力や増えるサービス残業。保育園を支えてくれている保育士の先生達のご苦労とは、実際はどのようなものなのでしょうか? 東京都内・公立保育園の保育士として13年の経験を持つ、中堅保育士お二人に「聞くのがちょっと怖い!? ぶっちゃけ本音トーク」をしてもらいました。

【「今、保育園が危ない」特集】
第1回 「園の運営に対して不安に感じる」親は50.8%
第2回 「保育の質」は下降する!? 今、親にできること
第3回 保育の質を改善するには、親達の「つぶやき」が必須
第4回 保育園“モンペ”にならない上手なクレーム術とは
第5回 現役保育士の座談会「保護者には何でも言ってほしい」 ←今回はココ
第6回 公立園と民間園では雲泥の差。厳しい「保育士事情」
第7回 わが子を保育園で亡くした夫婦 事故防止策を作成

「保育の質」以前に「親と子の質」に変化あり。モンスターペアレンツの実態

東京都内の認可保育園に勤める保育士・加藤学さん(仮名)
東京都内の認可保育園に勤める保育士・加藤学さん(仮名)

日経DUAL編集部 本日は東京都内の公立認可保育園に勤務する、保育士の加藤学さんと石川怜子さん(どちらも仮名)にお越しいただきました。お二人とも保育士歴は13年。

 加藤さんは、保育士になる前の3年間は障がい者施設に勤め、保育園は現在で2園目。石川さんはこれまで3つの保育園を経験し、現在の園での勤務は4年目に入ったところです。各園での勤務期間は各6~7年ほどだったということで、一つの園に割と長く勤務されていますね。

加藤さん(以後、加藤) 私が勤める自治体には「異動年限」というものがあり、原則として最低6年間は同じ園に勤めることになっています。以前は、もう少し短い期間で異動する場合もありましたが、7~8年前に保護者から要請があったようです。「あまり早く先生が異動するのは困る」、と。そこで、勤務1年目のときの0歳児が卒園するまで、つまり最低6年間は同じ園に勤めるというのが基本になりました。

―― 保育士の仕事を10年以上続けられる中、「保育の質」の変化をお感じになることはありましたか? 都内でも民間の保育施設が増えてきていますが……。

加藤 確かに保育園の数は増えていますが、だからといって私達の仕事内容が変わるわけではありません。公立の保育園には人員配置や面積などに関する国の基準があるため、そこから大きく外れることもありません。ただ、“子どもの質”が10年前とはだいぶ変わってきたな、という気はしています。

―― “子どもの質”というと?

加藤 対応が難しいお子さんが増えてきているという印象です。

 そのため、子ども一人に対する保育士の数を国の基準より増やしたほうが、手厚く見てあげられるのではないかと思いますね。知的な面や発達に問題がなくても、むしろ知恵が働く子で「困ったな」と思う行動を取る子どももいますから。

 保護者の方も昔とは変わってきています。いわゆる“モンスターペアレンツ”はご想像の通り、増えているというのが現状です。

―― ギク! 出ました、モンスターペアレンツ! 親としては、自分の“主張”が、“行き過ぎたクレーム”だと思われていないかどうかが非常に気になるところです。保育士さんの立場からご覧になった場合、どういった理由から「この親はモンスターペアレンツだ」と感じるのでしょうか?

<次ページからの内容>
・ モンスターペアレンツは「●●」だけを100%信じる
・ 親同士の交流が少ない園では些細なトラブルが大きく発展しがち
・ 保護者の「●●」という言葉に、ハッと我に返った瞬間
・ 園側は保護者とのやり取りも細かく共有するのが原則