全く問題がない“完璧”な家庭はありません。子どもの成長とともに訪れる課題に全員が「チーム」として取り組み、自分達らしい家族を形成すること--それが「ファミリー・ビルディング」の考え方です。幼児教育を通して6000人以上の子どもと接し、数多くの家庭をコンサルティングしてきた山本直美さんが、悩めるデュアラー世代へアドバイスします。第7回のテーマは「夏休みの過ごし方」。大人も子どもも待ちに待った夏休みだけど、いざ始まってみると普段の生活より疲れてへとへとに……。家族の絆も深めつつ、楽しい思い出にするにはどうすればいい? 山本さんにアドバイスを聞きました。

 こんにちは! チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美です。

 夏休みなどの長期休暇期間中は楽しいこともいっぱいですが、普段と違う生活リズムにいつも通り回らない家事、興奮して寝付かずぐずる子ども……と、なぜかどっと疲れるパターンに陥りがちです。家族が一緒に過ごせるのだから、いつも以上に仲良くできるはずなのに、夫婦間で小競り合いも勃発、子どもにもガミガミ。こんなはずじゃなかった!となる前に、長期休暇を家族で楽しく過ごすために心がけたいことをお伝えします。

 まずはじめに、“夏休み”という概念の前提が、大人と子どもでは違います。大人の考えでは特別な時間ですが、子ども達にとっては、何がいつもと違うのかよく分かっていないかもしれません。ようやく“夏休み”という概念ができ、計画を立てることができるようになるのは、小学生以降です。

なるべくいつもと同じ生活リズムで過ごす

 「いつもいないパパとママがいる!」「どうして今日は保育園(幼稚園)に行かないの?」――日常と違うことに、子ども達は興奮します。いつもは保育園なのに、今日は一日中パパ・ママと一緒!というだけで大喜びです。それがしばらく続くなんて、うれしくてハイテンションになるのが当然です。子どもにとってこの興奮は「当たり前」なのですが、パパ・ママからすると、いつもより扱いづらく感じるかもしれませんね。大人達の想定や期待値が間違っているかもしれないということを、まず認識してみてください。

 長期休暇は大人の文化です。いつもこちらのコラムでお伝えしているように、毎日同じ生活をすることが、子ども達にとっての「安定」です。この繰り返しが、心の安定につながります。

 夏休みだからどこかへ連れていこうと大人は思いがちですが、子どもを一番に考えるのならば、なるべくいつもと同じリズムで生活を送ることがおすすめです。特に遠出しなくても、午前中から夕飯のために買い物に行き、手作り餃子をみんなでワイワイ作ったりと、子どもはそれで十分楽しいものです。

 遠出をするのは、「せっかくの夏休みなんだからどこかへ行かないと!」という思い込みがあるからかもしれません。田舎に帰ることも、旅行に行くことも、「連れていってあげなきゃ」と思っている大人の都合だったりします。このような大人と子どもの前提の違いを理解しておかないと、「せっかく連れてきてあげたのに」ということにもなりかねませんよね。

 いつもと違う環境の中、多少はしゃいだり興奮したりするのは仕方ない、そう覚悟しておくこと。そのマインドセットを間違うと、ガミガミ叱ってしまったり、こんなはずじゃなかった……と子どもも大人もがっかりする結果になりがちです。