日経DUAL創刊時から、連載「ママ世代公募校長奮闘記」を執筆してきた大阪市立敷津小学校・元校長の山口照美さん。この4月からは、元民間人校長として公教育に関わる山口さん。そんな山口さんの言葉をストレートに伝える新連載がスタートしました! 

* 本連載の最後のページには、大人ではなく“お子さんに向けた”山口さんからのメッセージがあります。ぜひパパやママが声に出して読んであげてください。

未来を生きる力――、それは「死なない力」だ

 民間人校長として3年の任期を終え、当たり前に4年目を迎えると思っていたが、公教育に別の関わり方をすることになった。3月末に子ども達や仲間と別れを告げ、新しい職場に移った。子どもの声が聞こえない職場は、さびしい。仕事には「選んで就く仕事」と、「機会を与えられる仕事」がある。自分が貢献できる何かがあるのだろうと、前向きに切り替えて進むしかない。

 異動の打診があったとき、「情報発信を続けさせてほしい」という条件を伝えた。子育て真っ最中に校長となり、小学校の現場で気づいたことがたくさんある。あくまで一個人の立場で思いを発信したい。

 小学校にいたころ、「校長先生のお話(校長講話)」を毎週月曜日に行っていた。1年生から6年生までが分かるように話すのは難しい。月に一度は、講堂でパワーポイントを使った講話をしていた。たった10分間の授業。私は塾や予備校でたくさんの子どもを教えてきたが、教員免許を持っていない。授業が大好きなのにできない、そんな私にとっての唯一の機会が「校長先生のお話」だった。

 そこで連載を再開するにあたって「校長先生のお話」の続きをしたい、と思った。

 最後の1ページは、子ども達に呼びかける形で書いている。「未来を生きる力」をテーマに、さまざまな角度からボールを投げていきたい。正解は1つではない。親子で受け止め、キャッチボールしながら、考える機会になることを願っている。

 「未来を生きる力」と考えたとき、たくさんの能力や知識が思い当たる。ITスキルや、自由な発想力、グローバルなコミュニケーション能力など。さて、最初に取り上げるべき「力」をどうしよう? 書き手として、しばし悶々と数日考え続けた。しかし、どうしてもこの答えしか思いつかない。予測できない20年後の未来を生きる、子ども達につけたい力。

 それは、「死なない力」だ。