「死なない力」をつけるため、危険な場面に出合った大人は子どもを叱ってほしい

 ほとんどの親が、わが子の長生きを切実に願う。だから、全ての子ども達に、大人達は「死なない力」をつける必要がある。気が散りやすい未熟な子ども達を見ていると、ハラハラする。中高生だって安心できない。制服姿の学生が、自転車で車道を走りながらスマホをいじっている。体は成長していても、大胆な行動をカッコいいと思う年齢の危うさが出てくる。

 「死なない力」を育てるには、まず周りの大人が「命に関わる場面」で真剣に叱ることだ。危険な場面に出合ったら、躊躇せずに叱ってほしい。たった今起きた「ヒヤリハット」を、子ども達が軽く考えないために。そこで何も叱られないと、ヒヤっとする場面を切り抜けた成功体験が、子どもを慢心させてしまう。子ども達の緊張感と安全意識を養う。自分の身は自分で守る力が必要だ。そして、安全な環境は大人が守らねばならない。

 学校にいたころは、養護教諭がアンテナを研ぎ澄ませ、管理作業員と協力して環境改善をしていた。金属製の傘立ての角、雨の日の廊下、給食袋をかける金具……。ほころびを見つけ、改修や警告を行う。子ども達の行動パターンを観察し、環境面での防御をするのは大人の役目だ。乳幼児の家庭内事故も、同じだ。「危ない場面を叱る」「安全のための環境整備」の2点を家族で確認してほしい。5~9歳の死因は「不慮の事故」が1位(厚生労働省 H21年度調査)だ。

 だからといって、危険要因の一切を排除してしまうと、子ども達の経験値が低いままになる。理科の実験で火を使うと危ないからと言って、IHヒーターでやればいい、映像を見せておけばいいでは、火の熱さや怖さを知らない大人が育つ。それは、本当に「死なない力」につながっているだろうか? 体験を通じた安全指導や防災教育を、学校ではどう取り入れるか試されている。家庭でも、考えてみてほしい。

 「死なない力」には、もう一つ「自ら死なない力」もある。このテーマについては、次回以降に書いてみたい。

* 次ページは、山口さんが子ども達に送るメッセージです。記事末には、一言コラム【最近の山口家】も掲載。山口さんのプライベートライフを少しだけご紹介します!