第87回アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされ、第28回ヨーロピアン・フィルム・アワードにて長編アニメ賞を受賞した映画『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』が、8月20日(土)に日本でも公開されます。制作したのが“ポスト・スタジオジブリ”と本国アイルランドで称される制作会社“カートゥーン・サルーン”。この作品の監督であるトム・ムーアさんと、日本語吹き替え版にベン役の声優として出演する本上まなみさんの特別対談を単独取材しました。「本上まなみ 子は親が思うより深く、親を思っている」に引き続き、お二人がそれぞれの家族に対する思いを交えながら、この映画を通して伝えたいメッセージを語ります。

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』トム・ムーア監督と、ベン役の声優として出演する本上まなみさん
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』トム・ムーア監督と、ベン役の声優として出演する本上まなみさん

ベンのモデルは、監督の実の息子

ムーア監督(以下、敬称略) 今、本上さんのお子さん達はおいくつなんですか?

本上さん(以下、敬称略) 娘が9歳、息子が3歳です。

ムーア あはは(笑)……、であれば、お子さん達はこの映画が描いている“子ども達の旅路”の真っただ中にいらっしゃるんですね。私の息子のほうはもう20歳になりました。今回本上さんが声優として演じる男の子と同じ、ベンという名前です。実は、10歳のときの息子をこの映画の中に閉じ込めたので、僕はこの映画を見るたびに懐かしくてちょっと寂しい気持ちになります。今はもう彼は大人になりましたが、10歳のころはまさに映画の中のベンそのものでしたよ。

―― 先ほど(前回記事「本上まなみ 子は親が思うより深く、親を思っている」参照)大人は意外にも子どもに助けられることが多いというお話がありましたが、ムーア監督が、幼かったころの息子さんに助けられる場面もあったのでしょうか?

ムーア そうですね、息子からたくさんのインスピレーションをもらいましたよ。息子は私がこの映画を作り続けてきた7年間をずっと見てきました。映画に登場するベンは本人と同じく、歯が少し欠けているので、「恥ずかしいからこの描写はやめて」なんて言われたこともありましたが、7年もすると彼女もできてその子が「お父さん、かっこいい。こんなアニメーション作ってる人なの?」と言ってくれたころから、だんだんと僕のことを尊敬してくれるようになって解決しましたね(笑)。

―― 奥様はこの映画をご覧になって何とおっしゃっていましたか?

ムーア 妻には、この物語を思いついたころから話をしていました。この作品はある意味、“母親の物語”でもあります。実は妻の友人の一人が、お子さん2人を残して亡くなってしまったのです。この物語の設定に似ているわけです。その事態にそのご家族がどう立ち向かっているかという話も聞かせてもらいました。妻が共有してくれた色々な話がこの映画にも反映されています。

毎日けんかばかりしていた妹・シアーシャと兄・ベン。しかし、次第に力を合わせることを学び、大きな困難を乗り越える
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