「この映画を通して、アイルランドの世界観と家族の絆を伝えたい」

ムーア (拍手)。キャラクターを子どもの目線から見ていただいてうれしいです。山形は民話や昔話がたくさんある場所なのですか?

本上 たくさんありますね。

ムーア アイルランドの西海岸と山形の海は似ているのかもしれませんね。

―― おばあさまからは、どんなお話をしてもらっていたのでしょう?

本上 色々聞きましたけれども、例えば『天女の羽衣』とかですね。

ムーア 『天女の羽衣』は少しセルキーの話に似ていますよね。

 本上さんにお目にかかるのは初めてですが、子ども達の目線で映画をご覧いただき、すごく共感するところがあるというお話を聞いてうれしいです。今回ベン役をやっていただきますし、また異文化でも日本とアイルランドに何かつながりを感じていただいた本上さんに、そのメッセージを映画を通して日本の皆さんに伝えていく役割を担っていただくということもうれしいです。

―― ムーア監督がこの映画を通して、人々に最も強く伝えたいと思っているメッセージを教えてください。

ムーア この映画は、ある家族の物語です。その家族は大事なものを失いますが、最終的にはその悲しみから立ち直っていきます。アイルランドにおいて、セルキーは海で失われた魂を象徴するような存在、メタファー(隠喩)でもあるのです。

 兄、妹、父親、祖母から構成されるこの家族は一度は崩れてしまう。最初、兄と妹はけんかばかり。でも困難を乗り越えていく過程で互いに力を合わせることを学び、家族をまた一つにしていく“旅路”を描いた作品です。日本とアイルランドは全然違う国かもしれませんが、家族や絆という感覚はご理解いただけると思います。それと同時に、お子さんをお持ちであればお分かりだと思いますが、子ども達って「けんかはやめなさい」といってもけんかをするものですよね。僕自身、子どものころは姉とよくけんかをしていましたし。それでも子ども達は最終的に仲直りする。子ども達もこの映画を見ながら「なんかこの子達の気持ちが分かるなあ」と思ってくれるのではないでしょうか。