定年を65歳に引き上げ、短い時間でも正社員で働けるように

 さらにシーボンは2014年から、定年を60歳から65歳に引き上げた。同時に65歳で定年を迎えた後も、再雇用制度や嘱託社員などの制度により、70歳までの継続雇用を実施している。そして60歳以上の社員は、ショートタイム正社員制度の利用も無条件で選べるようにした。「店舗の場合、例えば60歳以上のショートタイム正社員は、昼ごろから閉店まで働いたりして、夜遅くまでは残れない子育て中の社員と、うまくバトンタッチができている」と稲葉さんは話す。

 同社が50歳以上の社員に実施した「60歳以降の働き方に関するイメージは?」というアンケートでも、「働ける間は、今と同じ働き方で仕事を続けたい」が33%、「残業なしで仕事をしたい」が28%、「時間を抑えて働きたい」が13%、「バリバリ働いて、責任のある仕事をやりたい」という人が5%いた。約8割が働くことに意欲はあるが、60歳以前と同じ時間・働き方だと難しいかもしれない、と考える人も多いことが分かる。「何年か後には、60歳を迎える社員も今よりも増えてくるでしょう。ショートタイム正社員の制度は、そんなベテランの社員に働き続けてもらうためにも活用できそうです」と稲葉さんは話す。

 女性社員が活躍するのと並行して、同社では女性の役員も多い。金子靖代社長も美容社員からキャリアアップした生え抜きの女性社長で、「誰にでもチャンスがある」という社風が根付いている。役員10人中6人が女性。また管理職全体でいうと87%を女性が占める。

 同社が過去3年以内に産前産後休業や育児休業を取得した女性社員や、育児のために短時間勤務をしている女性社員にヒアリングしたところ、子育てが一段落した後の働き方として「キャリアアップや昇格を目指したい」「技能を磨きたい」など、キャリアアップに意欲を示した社員が44.6%いた。

 子どもが小さい時期に、無理なく両立できる環境を用意すること、そしてマミートラックに陥らないよう、また出産前のようにギアを上げたい人に、戻る場所やキャリアアップの機会を与えてあげること。この両方がそろって初めて、女性が働きやすい会社になるのだろう。

家族を職場に招待し、子ども達による職業体験などをする「ファミリー・デイ」の様子
家族を職場に招待し、子ども達による職業体験などをする「ファミリー・デイ」の様子

<シーボン:その他の両立制度>
【育児休業の延長】 最大3歳まで
【育児短時間勤務期間の延長】 状況に応じて小学校入学まで
【ウェルカムバック制度(再入社制度)】 育児等の理由により、退職した社員の再入社を支援
【男性社員の育児休暇取得】 男性社員も女性社員と同条件で取得可能
【ファミリー・デイ開催】 家族を職場に招待し、子ども達による職業体験やパーティーで親睦を図る
【社内報】 産休・育休中のライフスタイルを紹介

(取材・文/日経DUAL編集部 砂山絵理子)