年少クラスの子には自分の殻を破ってほしい

 子ども達が話の内容を理解できているか。その都度反応を確認しながら、指示の出し方や言葉の言い回しに注意を払っていると小川先生は話す。

 「不安な様子が見られても一から説明し直さず、『次はどうするんだっけ?』と自分で考えさせます。授業以外の部分でも物事にワンクッション置いてしまう子が多いのが年少クラスの特徴。慎重さも大切ですが、その殻を破ってほしいという思いがあります」(小川先生)

 入学から間もない4月ごろは生活のリズムも定着しておらず、それぞれがバラバラに行動していたという、あやめ組の子ども達。小川先生は休み時間など授業外の時間を使い、自分の行動を振り返らせながら、理解できる範囲での語彙を使って相手に伝える方法を指導していった。

 「何かトラブルが起きたときに、あやめ組の子に話を聞くと『だって、だって』が第一声。『だって、○○くんがイヤだった』という表現になりがちなので、相手の話からではなく『自分はそのときどうしたのか』と置き換えて話をさせるように心がけています。年長クラスの子には『僕はこれをこうしてあげたんだけど、○○くんにはダメ(通じなかった)だった』という会話ができている子も多いように感じます。語彙力だけでなく、自分と他者を比べながら会話ができるのも年少クラスとの違いのように感じます」(小川先生)

 指導の甲斐があってか、あやめ組の子ども達も周りの様子を見つつも積極的に行動できるように変わってきたという。

年長クラスには「友達がいない」タイプの子が多い?

 年長のきく組の担任である高橋慎一先生は、受け持ちのクラスをどう見ているのか。質問をすると意外な答えが返ってきた。

 「『友達はいない』というタイプの子が多いかもしれませんね」

 何事にも積極的で飲み込みも早いという年長クラスにおいて、これは一体どのようなことなのだろうか。

 「体格が人より大きいせいもあってか、幼稚園や保育園ではリーダーシップを取ってきた子ども達が多いのが年長クラスの特徴です。だから、友達というより『自分の言うことを聞く人』としてクラスメートについ接してしまうこともある。『○○くんが口答えした!』なんて理由でケンカする子もいるんですよ(笑)」(高橋先生)

 こうした年長クラスの子に対し、高橋先生は自分の主張を通すだけでなく、相手の意思も尊重すること、相手を傷つけるようなことをしたら「ごめんね」と素直に謝れるようになることを指導しているという。

 小川先生、高橋先生が口をそろえていうのは、「年長クラスと年少クラスの間に学力面での差があるわけでは決してない」ということだ。月齢順で分けることによって、生活のペースや理解力に応じた生活指導や授業運営がしやすくなり、子ども達がすんなりと学校生活に溶け込める手助けになると感じているという。

 ――次回は玉川学園小学部の後藤教育部長と野瀬教務主任のインタビューを通して、月齢による発達の差に親がどう向き合うべきかを解説する。

(文/樋口可奈子)