早生まれの子育てについて考えるシリーズの第2回。前回の記事では、主に0、1、2歳児の親が抱える悩みについて現役保育士に話を聞いた。体力や発達の差などはほとんど心配する必要はないというアドバイスをもらったのだが、一方で「幼稚園年少ごろから手先の器用さや運動能力に月齢差が出る」という気になる発言もあった。保育士の言う通り、あくまで個人差はあるだろう。しかし、小学校に入って勉強が始まったら、その差はどの程度現れるのだろうか。
 そこで、小学校1年生のときだけ、誕生日順ごとに生徒をおおむね半分に分けて、「年長」「年少」の2クラスを設置している私立玉川学園小学部の授業に密着し、早生まれの小学生の実際の様子と、現役教師の見解を探った。

【早生まれの子を育てる特集】
(1)保育士が断言「早生まれの子にはメリットしかない」
(2)早生まれの1年生 月齢順クラス分けで成長を見守る ←今回はココ!
(3)親は子に「生まれ月が早い、遅い」を意識させないで

生徒の誕生日を基準にクラス分け

 6月下旬のある月曜日。時計の針が11時20分を指すと、それまで廊下でおしゃべりや遊びに夢中になっていた生徒達が、一斉に自ら席につき、慣れた手つきで筆箱を机に置いて行く。

 「では、始めます。みんなが『朝起きてからやること』って、どんなことがあるかな。考えてみよう」。先生の一言で、1年あやめ組の4時間目の授業が始まった。

 東京都町田市にある私立玉川学園小学部。小学校1年生から4年生までが過ごす低学年校舎では、授業の開始を知らせるチャイムは鳴らない。子ども達が合図によって動くのではなく、時計を見ながら自主的に行動する力を育てる。それが玉川学園小学部のモットーだ。チャイムだけではなく職員室も存在しない。教職員は各教室の一角にあるオープンなスペースで、学習の準備や昼食、遊びの時間といった1日のすべての時間を生徒達と共に過ごしている。

 飴色の木の廊下や、大きく開口された窓から覗く青々としたヒマラヤ杉。テラスにはベンチやテーブルが置かれ、お弁当を食べることもできるという。教育は「6・3・3」ではなく「4・4・4」制を採っており、小学校5年生からは中学部の校舎で学ぶ。校舎はわずか4学年分の生徒のために用意されたとは思えないほど広々としており、すぐそばには低学年専用のグラウンドもある。まるで高原のリゾート地のような環境だ。

小田急線「玉川学園前駅」の駅前に広がる広大なキャンパスは幼稚部から大学までを擁し、合わせて約1万人の生徒・学生が学んでいる
小田急線「玉川学園前駅」の駅前に広がる広大なキャンパスは幼稚部から大学までを擁し、合わせて約1万人の生徒・学生が学んでいる

 玉川学園小学部において最も特徴的なのは、全国でも珍しい月例順のクラス編成だろう。小学校1年生時のみ、生徒を誕生日順に並べておおむね半分にし、クラスを分けている。昨年までは3カ月ごとに分けていたが、今年度からバイリンガルクラスを導入したため、バイリンガルの年長、年少、一般クラスの年長、年少の4クラスとなったそうだ。今回は、一般の2クラスの授業風景を取材させてもらった。