親のほうが何でも早生まれと結びつけている?
A 0歳児、1歳児くらいまでは、自己表現の手段として、不満を感じたときに相手をたたいたり、かみ付いてしまったりする子もいます。
B 性格にもよりますが、かみ付き行為は多くの子が通る道です。「遊んでいたおもちゃを横に置いた隙に取られてしまい、怒って取り返しに行ってガブっとかんでしまう」というようなケースは頻繁に起こります。おもちゃを取られて悔しいという思いの表れなのですが、これは一人っ子の場合など、家庭で子どもが一人きりで遊んでいるときには芽生えない感情なんです。集団の中にいるからこそ、そういった自己表現が出てくる。
A 保育士はそういう点も踏まえて見ているのですが、かまれてしまった側のお子さんが早生まれだった場合、親御さんが「うちの子がしゃべれないせいで」「幼いから」と、着地点を見つけてしまうことはあるのかもしれませんね。
B トラブルの原因が何であっても、すべて早生まれに結びつけてしまうと大変ですよね。
A 親御さん達の質問を聞いていて、早生まれの子育ての悩みの多くは親側のコンプレックスによるものなのかなと感じました。
―― 実際は悩む必要はないのに悩んでしまっている、ということでしょうか。
A そうですね。早生まれで生まれてきた場合、まず保育園に入れるのが難しいという悩みがありますよね。入園さえしてしまえば、早生まれの子にはいい影響ばかりだと考えていますが、そもそもの入園事情が厳しいだろうというのは現場の保育士も肌で感じていますから。
B 保活にまつわる劣等感や苦労が、そのまま早生まれ児への心配にすり替わってしまっているのかもしれないですね。
A 私の一番上の子は早生まれなんですが、幼稚園の年少のときに先生から「早生まれにしてはよくできる」と言われたことがありました。私自身はそんなこと意識していなかったから、言われてびっくりしてしまって。
B 先生は褒めていたつもりだったんでしょうね。
A 確かに3、4、5歳くらいになると箸やはさみの使い方、スキップができる、できないなど、器用さや運動能力に月齢差が若干出るようにも感じるのですが、そこにも個人差はありますよね。
B そうですね。少なくとも0、1、2歳の間は「早生まれだから……」なんて考えなくてもいいと思います。一年間は誰にとっても同じ長さなので、その中でどんな刺激を受けて成長していくかが大切ではないでしょうか。
A 先ほど生活リズムの話をしましたが、保育園生活は親御さんとってもお子さんとっても規則正しい生活を身に着ける絶好のチャンスだと思います。0歳や1歳からそういう生活に慣れている子は、ものすごくしっかりしたお子さんに育ちます。
B 子どもながらに自立していますよね。生活力があるというか。
A そうですね。早生まれであってなくても、そうした生活力が自然と身に付くのは保育園に通っている子ならではのメリット。そのように、我々保育士は考えています。
(文/樋口可奈子 3ページ目の写真/吉澤咲子)
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