教育・学習用のプログラミングツールとして広く使われ始めている「Scratch(スクラッチ)」。その日本での伝道師といえるのが、青山学院大学客員教授・津田塾大学非常勤講師の阿部和広氏である。10年以上にわたって毎週のように子ども向け、あるいは指導者向けのワークショップを開催している。そこで蓄積したノウハウを盛り込んだ書籍『小学生からはじめるわくわくプログラミング』(阿部氏が執筆・監修した書籍)も広く活用されており、今回はDUAL読者に特別キットと一緒にプログラミングの魅力を伝える。まずは日本でのScratchの活用状況やScartchプログラミングを子どもたちに伝える理由を聞いた。
(初出:ITpro 2015年7月31日)
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 Scratch(スクラッチ)の世界および日本での利活用状況を教えて下さい。

青山学院大学客員教授の阿部和広氏(写真/都築雅人)
青山学院大学客員教授の阿部和広氏(写真/都築雅人)

 世界規模での利用状況ということでは、Scratchの公式サイトの登録利用者数が目安になる。2015年7月時点で約710万人が登録して作品づくり(注:Scratchではプログラムを作品と呼ぶ)を楽しんでいる。このうち、日本での登録利用者数は5万4360人。世界全体の0.78%に過ぎないが、少し前は0.7%だったことを考えると着実に増えていると捉えてよいだろう(2016年6月末時点では、登録ユーザーは約1250万人が登録、日本での登録利用者数は約9万6500人と、いずれも急増している)。

 ユーザー数の増加とともに、作品数も急増している。例えば、Scratchの公式サイトにアップロードされた作品数はつい先日、累計で1000万を超えた。若干感覚的にはなるものの、Scratchが公開された2006年から2013年までに着実に増えてきたユーザー数が、2013年からの2年弱ほどで倍増しているほどの急増ぶりだ(2016年6月末時点では、作品数は累計で約1560万に到達)。

 ユーザー数や作品数が急増している理由は?

 世界ということでは、製造業から情報産業へのシフトを促す動きが後押ししていると考えている。具体的には、2013年の米国でのプログラミング教育の推進活動などがある。象徴的だったのが、オバマ大統領が「すべてのアメリカ人にプログラミングを学んでほしい」と呼びかけた演説だ。「1時間でいいからプログラミングをやってみよう」という運動(Hour of Code)の一環として、その普及活動に協力したものである。

 米国以外でも、例えば英国では小学生からプログラミングを含む計算機科学の義務教育化が始まっているなど、多くの国々でプログラミング教育にこれまで以上に力を入れた取り組みが始まっている。こうした動きがScratchユーザーの急増につながっているのではないか。