少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。今回は、前・自民党政調会長で、このたびの内閣改造で防衛相に就任した稲田朋美さんをインタビューしました。

※インタビューは2016年6月に実施。この記事の内容は当時の状況や情報に基づいています。

LGBTについても、正しいと思ったら行動する

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 今日は、稲田朋美先生にお時間をいただきました。日経DUAL世代の視点で、普段はじっくり伺えないようなお話まで聞ければと思います。

稲田朋美さん(以下、敬称略)  駒崎さんからはいつも保育の問題の実情について詳しく教えていただいています。日経DUALはネットでいつでも読める媒体なんですね。今度ゆっくり読ませていただきますね。

駒崎 たくさん伺いたいトピックスはあるのですが、まずはLGBTの話題から。今年5月初めに開催された性的マイノリティーの国内最大のイベント「東京レインボープライド2016」に稲田先生が行き、LGBTの皆さんを応援するメッセージを送ったと。

稲田 そう。随分話題になっていたみたいですね。

駒崎 僕は素晴らしい行動だなと感じました。同時に、自民党といえば、いわゆる旧来型の家族モデルを尊重する保守の印象が強いので、「おぉ!勇気あるご発言」という驚きもあったのですが、ご自身の行動を促すきっかけのような出来事があったのですか?

稲田 LGBTの問題についてはそれほど詳しい知識は持っていませんでした。ただ、たまたま息子の友人に当事者の方がいらっしゃったこともあって、関心は持っていました。昨年秋にアメリカで講演をする機会をいただいたときに、「人権を守る活動の一環として、LGBTの人権も守るべきだ」とお話したら、とても反響があったんですよ。その反響を受けてしっかり党の正式な組織で検討しようと特命委員会をつくって議論をしました。実際、LGBT関連で裁判にもなるなど社会問題化していますので、自民党としてもしっかり考えなければと思いました。思想・信条や歴史観にかかわりなく、人権の問題なので。でも、法案までは出せなかったのが残念でした。

駒崎 自民党の中にも色々な考えの方がいらっしゃると思うのですが、党内の保守派の方々から批判はなかったのですか?

稲田 私としては「正しいと思ったら行動する」というだけなんだけど、結構批判をされたり、心配もされたりするもんだなと、最近になって知りました(笑)。でも、それはLGBT問題が正しく理解されていないことの裏返しでしょ。やはり人権問題として周知理解を進めていくべきだと、ますます感じました

駒崎 とてもいい流れをつくっていただいたと感じます。

稲田 党内でもいろんな意見や問い合わせが来ているので、想定問答のパンフレットも作りました(『性的指向・性同一性(性自認)の多様性って?~自民党の考え方~』)。

私としては、自民党が人権を守る政党であることをしっかりアピールしていきたいという思いがあるんです。自民党はかつて、人権擁護法案に反対した経緯があるのですが、それは「人権」を定義する範囲があいまいだからです。人権の定義をあいまいにしたまま包括的に守ろうとすると、かえって表現の自由や政治活動の自由が制限されて日本の民主主義の基盤が脅かされるからです。でも、だからといって人権を守らないというわけではない。部落差別やヘイトスピーチ、そしてLGBTなど、個別の人権の問題には一つひとつ取り組んでいきますという姿勢を示していきたいと思っています。