④容積率緩和の条件に保育園設置を入れ込み、劇的量的拡大

 東京都は容積率規制が厳しく、「東京23区内で平均1.3階建て、山の手線内に限っても平均2.3階建てに過ぎない」ことは大前研一氏も指摘する通りです。

 音喜多都議はこれを受けて、以下のように提言しています。(http://otokitashun.com/blog/daily/11937/

 これを海外と比べてみると、パリ市の都心部は平均6階建ての高さであり、ニューヨーク(マンハッタン)では平均使用容積率が住宅街で約630%、オフィス街のミッドタウンで約1400%となっている。

 つまり、都内の容積率基準をパリ・ニューヨーク並に緩和・活用するだけで、東京都は今の数倍の土地を手にすることが事実上可能になります。

 そう、容積率緩和は、東京都が行うことのできる、最強の成長戦略の一つと言えましょう。デベロッパー達は大きなビジネスチャンスに小躍りするでしょう。

 そこに、「保育所を設置したら、容積率緩和」という条件を付与することによって、容積率というインセンティブを追うデベロッパー達はこぞって保育所建設に動機付けられるでしょう。新規に建てられる商業ビルやタワーマンションのほぼ全てに保育所が併設されることになっていくのです。

 まさに成長とセーフティネットの双方を実現できる策になりましょう。

⑤特区を活用し、小規模保育を全年齢対応に

 子ども子育て新制度によって創設された地域型保育(小規模保育・居宅訪問型保育・事業所内保育・家庭的保育)は、開園や運営に柔軟性が高く、待機児童解消に大きく貢献しえます。特に小規模認可保育所は初年度で1655箇所(認可保育所の6%程度)と激増しています。通常の認可園がつくりにくい住宅地等でも開園が可能なため、東京都でも広がっています。

 一方で、地域型保育は事業所内保育を例外として、「0~2歳まで」と定められています。これは制度設計の背景に、待機児童の多くが0~2歳までに集中していたこと、3歳以降は幼稚園などに転園することを前提にしていたことがありました。

 しかし、都市部においては3歳児でも待機児童が発生していること。幼稚園が3歳児以降の受け皿になっていないこと等があり、前提が崩れています。

 そこで、地域型保育(特に小規模保育)でも3歳児以降を受け入れられるように東京都が特区に申請を行います。例えば、1~5歳の子どもたちを各学年3人ずつ18人預かる小規模認可保育所や、3歳~5歳までの子どもを12人預かる小規模認可保育所をつくれるようにするのです。

 そうすることで、大規模な認可保育所がつくれないようなエリアにおいても全年齢対応の小規模認可保育所がつくれることとなり、3歳の壁を打破できるようになります。

⑥特区を活用し、居宅訪問型保育で複数の待機児童を預かれるように

 現在、障害児とひとり親を中心に規定されている地域型保育における「居宅訪問型保育」事業を、待機児童になった場合にも利用可能にすることで、待機児童解消のツールを増やします。既に千代田区等では柔軟運用の実例があるのですが、国が煮え切らないので自治体の方でもなかなか踏み切れないでいます。これを、東京都が国家戦略特区(もしくは地方分権改革提案)等の制度を活用し、東京都が「うちはこういうやり方を認めたいです」と提案するのです。

 また、現在は、居宅訪問型は基本的に1対1に限定されてしまっていますが、例えばAという家庭に訪問保育をするが、同じマンションのBという家庭の子どもも預かれる、という複数子対応も可能にすれば、費用対効果は向上します。

 海外では、こうした運用はイギリスのチャイルドマインダーやフランスの保育ママ等で行われていますが、日本においては家庭的保育事業(保育ママ)は保育者の自宅のみを想定しているため、上記のような柔軟運用はできません。

 居宅訪問型用途を柔軟化し、かつ定員数も1~3人とすることで、より待機児童解消に貢献できる仕組みになります。