統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。夏休みが始まり子どもたちはワクワクしていることと思いますが、同時に親世代が意識したいのは「休み明け」への配慮。何となく、気が重くなっていく感覚は、自分達も経験してきたことですよね。今回のテーマは「小・中学生の落第」ですが、特に、舞田敏彦先生がこの統計データを読み解く理由に注目してください!

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。今回は、落第のお話です。落第とは法律用語で「原級留置」といいます。成績不振で上の学年に進級できず、今の学年(原級)に留め置かれる措置です。

 2014年度の高等学校でみると、1万7千人ほどの生徒が原級留置(以下、落第)となっています。全生徒に占める割合は0.5%、200人に1人です。全日制の普通科では0.2%、専門学科では0.3%、定時制では2.4%、通信制では3.5%となっています(文部科学省統計)。

日本の小・中学校は出席日数0日でも卒業できる!?

 義務教育の小・中学校はどうかというと、この段階では公式統計がありません。皆無なので統計をとっても意味がない、ということでしょう。確かに、小・中学校での落第なんて聞いたことがないですよね。

 法律上は、小・中学校でも落第はあります。学校教育法施行規則第57条では、「小学校において、各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たつては、児童の平素の成績を評価して、これを定めなければならない」と定めています(他の学校にも準用)。よって義務教育においても、成績不振者や長期欠席者の落第はあり得るわけです。

 しかし実際のところ、義務教育中は成績や出席日数に関係なく、加齢とともに自動的に進級・卒業させる方式がとられています。定期テストを白紙で出そうがOK。一日たりとも学校に行かずとも、卒業できたケースも山ほどあるそうです(『不登校新聞』2015年1月15日)。

仏で6人に1人、ブラジルでは4人に1人、小学校で落第

 しかるに、海外ではそうではありません。小学校といえど、成績が振るわない児童はガンガン落第させられます。表1は、主要国の小学校の落第経験率です。15歳の生徒に対し、「小学校で落第したことがあるか?」と尋ねた結果です。

 小学校(primary school)の落第経験率ですが、どの国の数値も、日本の高校より高くなっています。アメリカとドイツは10人に1人、フランスは6人に1人、南米のブラジルでは4人に1人が小学校での落第経験者です。

 これは7カ国のデータですが、世界全体を見渡すとどうでしょう。