社長就任当時、一番困ったのは採用。その経験から家族旅行へ
星野佳路氏は1991年に株式会社星野温泉(現星野リゾート)代表取締役社長に就任。その際一番困ったのが「人の採用だった」といいます。星野リゾートといえば観光分野で注目の的。今となっては信じ難い話ですが、星野氏は「人集めが大変なのは観光産業全体の問題で、弊社もまさにその一つでした。今でこそ採用もスムーズですが、社長就任当初は、いい人材を採用できて喜んでいたら、すぐに辞めてしまうことも多かった」と当時を振り返ります。
「私はリクルーティングのポイントは『仕事が楽しいこと』だと思っています。なぜ辞めてしまうのか?という原因を探っていくうちに、原因はお客様にあるのではないかというところへ行き着きました」(星野氏)
就任当時に運営していた星野温泉旅館は、団体客や社員旅行も多いごく一般的な温泉宿。宴会もあり必然的に酔い潰れるお客様も多く「酔っ払ったお客様への対応は本当に大変。苦労して採用し、長野まで住まいを移して覚悟を決めて入社してくれたスタッフに、そんな仕事をさせるのが嫌で仕方なかった。だって楽しいわけがないじゃないですか」と星野氏。
社員旅行全盛期、予算が潤沢で効率良く稼げる団体客は、宿にとってはありがたい存在だったはずですが、星野氏は思い切った決断をします。
「団体客ではなく個人客へ、中でも家族旅行をターゲットにする方向へかじを切りました」(星野氏)