先生への感謝の気持ちは強いが、月給はいくらが妥当?

 一方で、保育士や保育園への感謝の気持ちは大きいようだ。

 「保育士など保育園やこども園、幼稚園の先生に感心すること、感謝していることはどんなことか」という質問では、回答数が回答者数の5倍近くに上った。「いつも笑顔で応対してくれる」「連絡帳にその日の様子を丁寧に書いてくれる」「子どもの相手をこまやかにしてくれる」といった日常での応対には、多くの保護者が感謝を寄せている。その他の回答をいくつか見ていこう。

 「登園を嫌がったことがないので、仕事に行きやすくありがたい」
 「子ども達が保育園楽しかったと言ってくれるので、とにかく感謝しかない」
 「色々な先生が子どもの様子を細かく把握してくれている実感がある」
 「子ども達の個性を尊重しながら、担任問わず、すべての先生方が愛情を注いでくれる」
 「クラスの子だけでなく、通う園児すべて(約100人)の名前をほとんどの先生が覚えている。保護者や祖父母の顔もかなり覚えている」
 「子どもがケガをしたときや、ちょっとした湿疹なども気づいて伝えてくれる」
 「子ども、親ともに丁寧に接してくれる」
 「一緒に子育てしているような感じで親にも接してくれる」
 「基本的なしつけもしてくれる」
 「アンガーコントロールのような感情処理まで含めて、友達との関係を築けるようにしている」
 「園庭はなくてもお散歩は毎日、保育士さんは少なくても手間と愛情をかけてくださり、狭くても子どもが楽しそうに遊んでいる。働くママへの配慮あるシステム。認可を蹴って入園させた、わが家の正解はここでした」

 そしてこうした感謝の念があるからこそ、現在の保育士の待遇を改善してもらいたいという保護者は多い。では、「低い」と言われる保育士の給与は、どれくらいなら妥当なのだろうか?

 「もしあなたが園の経営者なら、保育士に月額でいくら給与を支払いたいか」という質問に対しては、51.0%が25万円以上30万円未満と答え、次いで30万円以上35万円未満が21.9%で合わせて7割以上の人が現在の平均月収20.7万円(*)より多くしたいと考えていることが分かった。その他の回答としては「経験を積んで40代になるころには35万円より多く」「基本的は25万円以上でよいと思うが、ベテランと新人で少し差があってもいいと思う」「年齢×10万円」「基本給としては25万~30万円で残業手当、休日出勤手当は別途支給」など、能力や年齢に合わせた月収および手当の充実を訴える声も目立った。

 今回のアンケート結果からは、保育施設の現状を理解しながらも不安を抱える保護者の現状が見えてきた。とはいえ保育士の待遇が改善されれば、人材不足も解消され、保育士の子ども達への対応もより良くなっていくかもしれない。次回は労働経済ジャーナリストとして女性の就労問題にも取り組んでいる小林美希さんに、日本の保育園で何が起きているのか、今後どのような方向に向かっていくのかを伺う。

* 全国小規模保育協議会が厚生労働省「平成25年度 賃金構造基本統計調査」を基に公表したデータによると、私立(民間運営)の認可・認可外保育所の保育士給与平均月収は20.7万円。全産業平均の29.5万円を大きく下回っている。

(2016年8月25日11時)
 記事中に誤りがありました。1ページ目、アンケート概要欄および本文1行目で初出時「459人」としていましたが正しくは「456人」です。該当箇所は訂正いたしました。お詫びいたします。

(文/山田真弓)