苦手な並行作業を2カ月で克服 「うちのごはんが一番おいしい!」

 もう一つ慣れで可能になったのは、複数の調理を並行してできるようになってきたことだった。それまでは、一度に1つずつしか作れなかったので、とにかく時間がかかった。味噌汁を作り始めると、出来上がるまで次の調理に移れないのである。先にやってることを忘れて、目の前にあることしか見えなくなってしまうのだ。並行作業が苦手な男は、周りにも結構多い。

 それも次第に、パターンが見えてくるようになった。ここからここまではある程度ほっといても大丈夫、という時間を発見し、そのときに別の料理を仕込むことを覚えたのである。またキッチンタイマーを多用することで、やっていることを忘れないようになった。

 さらに500mlの水が沸騰するまでの3分、炊飯用土鍋が吹きこぼれるまでの5分間といった具合に、いつもやる調理の時間そのものを物差しにして、別の調理の時間を計るということも覚えた。同時にやるのではなく、工程をずらして、それぞれの調理時間を物差し代わりにするのだ。

 毎日毎日欠かさず子どものために料理をし、ここまで見えてくるのにおよそ2カ月かかった。今では娘は「うちのごはんが一番おいしい」と言うようになり、外食に誘っても嫌がるようになった。

 仕事上での夜の飲みのお誘いはすべて断わることになってしまい、僕的には付き合いがめっきり減って寂しかったが、娘が一人で留守番をできるようになるまでと割り切った。