私にとって「この人好き!」な人たちとアルバムを作れた幸せ

 私は、楽曲は全く一人ぼっちで作ります。プロデューサーなどスタッフと一緒に作る人もいるけれど、私はどの段階も一人でやっています。

 たぶんね、隣にいる誰かに「そこのコードさー、ちょっと違うんじゃないー」とか言われるのが嫌なんだと思う。「うるさい! できるまで待ってて!」って思っちゃうっていうね(笑)。誰かと一緒に作るのが嫌なんじゃなくて、できるだけ曲作りを始めてからの集中力を大切にし、クリエイティブの流れを断ち切られずに作りたいんですよね。

 だから、デモテープとか作る段階は誰にも相談せず、ほとんど一人で作ってきました。

 なのに! 今回のアルバムに入っている『ミラーボール』と『My Life』という曲は、珍しく人とコラボレーションして作ったんですよ。それは、TRICERATOPSの新婚さん、和田唱くん。これは、ほぼ一人ぼっちで作る私にとっては、ものすごい特別なことだったんです。

 唱くんは、20年近く前にテレビで彼が演奏しているのを見て、すごいなと思って。で、私のラジオ番組にゲストとして来ていただいて以来のお付き合い。いつか一緒にやりたいなと思っていました。

 といっても、二人で一緒に「せーの!」で考えるやり方は無し。彼もきっと、考えているときは横やり入れられたくないだろうなと思ったから、お互いにちょっとずつフレーズを作って、iPhoneで送り合って、唱くんから「続き作ったよー」と送られてきたら、私が、「いいね。次はこうしない?」って返信する。それを繰り返して作りました。半ば文通状態でしたが、これがすごく面白くて。だって、自分にはない他人の発想が、予想もしない方向からやってくるんですよ。

 私はもの作りしている間は人に立ち入ってほしくないから一人で作っているけれど、やっぱりどこかでパターン化してしまうこともあるし、「あー今、ちょっとスパイスが欲しい!」ってなることもあります。そんなときに、ぽーんと飛んでくる他人の発想の面白さ、新鮮さといったら!

 だから、唱くんからの返事がいつもすごく楽しみでした。なんていうか、漫画や小説の連載の続きを待っているような気分で。この続き、来週どうなるんだろう、待ちきれない! みたいなワクワク感がありました。で、そこから思いも寄らなかった化学反応が起きたりして。これは、一人で曲作りしているときには絶対に味わえない気持ちですよね。

 唱くんをはじめ、今回のアルバムではタブラ奏者のU-zhaanさんとか、編曲では冨田ラボさんとか、そしてH ZETT Mさんにも参加していただき、多くの方に力を貸してもらいました。

 皆、見に行ったライブで圧倒されたり、他の作品ですごいなと思わされたりした方ばかり。私にとって「この人好き!」な人たちです。だから、アルバムを作りたいから力を貸してくださいとお願いして、「いいですよ!」と言っていただいたときはもう、私にとっては「付き合ってください!」「OK!」って言われたときくらいの幸せ感でした(笑)。

 そんなこんなで完成したアルバム。聴いてくださった方からたくさんコメントをいただきました。うれしかったのは、「昔のミュージシャンが、昔懐かしいものを発表したのとは違う、すごく今のアルバムっていう感じがする」って言ってもらえたことかな。お聞きいただいて、私自身が楽しんで作ったことが伝わったらうれしいなと思います。