日経DUALで大好評だったマンガ連載「新・働きママン」は、第18話をもって最終回となりました。DUALが創刊当初(※2013年11月)からお届けし、働きながら子育てするママ・パパの焦りや悩みに優しく寄り添ってきた同シリーズには、毎回掲載するたびに大きな反響がありました。
 今回はマンガ家おぐらなおみさんをはじめとする「新・働きママン」の制作メンバーが再度集結し、思い出深い場面やセリフを振り返る座談会を開催します。参加者は全員が働くママ。登場人物の心情や展開にリアルに共感してきたメンバー達が、それぞれにとっての名シーンを語ります。

(日経DUAL特選シリーズ/2016年9月収録記事を再編集したものです。)

【改めて読み直したい方はこちらから】
第18話 涙は風圧でふっとばせ!私が選んだ人生だ
第17話 悩みながらも前進!のぞみフルタイム復帰します
第16話 時短勤務で悩むのぞみ 職場への失望で心が折れた
第15話 ムダ遣い後悔する日が来る?のぞみ働く目的を再確認
第14話 独身まみ子 なぜ姉達はあえて両立の道を選んだ?
第13話 安心できる保育園と仲間に出会ったのぞみ夫婦
第12話 “手作り”より仕事を選んだ、でも…。弱気なのぞみ
第11話 「ばあば」は大切な育児チームの一員 允彦が猛反省
第10話 「病児を預け出勤する意味って?」のぞみ2万円の涙
第9話 離婚だけはされたくない! 「俺は育休を取る」
第8話 「よし、離婚だ!」協力ゼロ夫についにキレた
第7話 働く母あるある 職場復帰ママのご褒美はアレ
第6話 親バカ・谷家の大騒動 保活中に取引先が激怒!?
第5話 会社で破水!? いよいよ出産が始まった!
第4話 パパ新世代 夫・允彦 「育児も出世も諦めません」
第3話 世代の違う母には相談できない「働く妊婦」の不安
第2話 新・働きママン 険しい道 上司へ妊娠報告(無料)
第1話 待望のDUAL版主人公登場!新・働きママン(無料)

【座談会参加者】
おぐらなおみ……今年20歳になった娘と14歳の息子のママ。子どもの成長と入れ違いでやってきた”自由”に寂しさを感じながらも、「その分、仕事に没頭できる!」と腕が鳴る今日このごろ。
小林延江……14歳の息子と9歳の娘のママであり、本連載の構成・編集を手掛けた敏腕マンガ編集者。息子との共通の趣味は、もちろん「マンガを読むこと」。事あるごとに話題作の感想を語り合う。
松田紀子……10歳の息子のママ。本連載を束ねた書籍『新 働きママン 谷のぞみ(32) ワーママデビューします!』(KADOKAWAから発売中)を担当した、KADOKAWAきってのキレキレ編集者。
初代・DUAL編集部の連載担当 N……7歳と5歳の息子のママ。連載を読みながら、電車の中で、会社のデスクで、所構わず号泣したこと数知れず。
二代目・DUAL編集部の連載担当 K……2歳の娘のママ。まだ世に出ていないマンガ第一稿を手にできる喜びをかみしめながら、第10話以降を担当した。

男性登場人物の成長シーンが胸に染みました

K 今日はお集まりいただき、ありがとうございます。私は毎月、おぐらさんと小林さんからメールで原稿が届くたび、作業中の他の仕事を脇に追いやり、かぶりつくようにして読んでいました。そんな楽しみがなくなってしまうのは寂しい限りですが、今日は数ある名シーンの中から、特に皆さんにとって印象深いところを教えていただきたいと、座談会を開きました。まずはおぐらさんにぜひお聞きしたいです。

おぐらなおみさん(以下、敬称略) 「新・働きママン」もついに完結しましたね~。感慨深いものがあります。「働きママン」シリーズの中でもこの「新・働きママン」では、男性の登場人物達に色々悩んでもらいたいという思いが私の中にあったんです。それでいうと、印象深かったのは第9話で主人公のぞみの妹・あゆみの夫が、保育園からの帰り道に「俺、父親になったんだなあー」としみじみするシーン(第9話「離婚だけはされたくない! 「俺は育休を取る」)。

小林延江さん(以下、敬称略) ありましたね~。この夫は育休を取るんですけれど、お昼からお酒飲んだりして「ちょろいぜ育休♡」って最初は勘違いしちゃうんですよね。そしてあゆみに「育休中のママをバカにしてるの!?」と怒られて目が覚める。1回失敗するところがリアルですよね。

松田紀子さん(以下、敬称略) 失敗した後、何とか続けていくにつれて、家事も育児も回せるようになっていく。男性の成長シーンがじんと胸に染みる回でしたね。 

おぐら 男の人って子どもが生まれた途端に自分のすべてが子育てにもっていかれる、というんじゃなくて、子育てに関わりながら徐々に父親の自覚が出てくる人が多いのかな、って描きながら思いました。あゆみの夫は育休を取ったことで、これからの人生が豊かなものになること間違いないですよね。

おぐらなおみさん(右)と小林延江さん(左)
おぐらなおみさん(右)と小林延江さん(左)

 もう一つ、男性陣の登場場面で印象に残るセリフは、第11話でのぞみの夫・允彦が義理の母に頭を下げて言った「自分さえ頑張ればなんとかなるというのは危なっかしい考えですね。痛感しました」第11話「『ばあば』は大切な育児チームの一員 允彦が猛反省」)。これも、描きながらまさに!と思ったところでした。

 「自分さえ頑張れば」というのは私を含め女の人が陥りやすい考え方だと思いますが、男の人がこんなふうに痛感してくれると、「一人で頑張らないためにいろんな手を使おうよ」と一緒に考えてくれるようになりますよね。振り返れば、私が育児で大変だったころはこの点が少し足りなかったと思います。仕事柄、私の職場は自宅になるので、どうしても家事・育児の負担が私一人にかかってくるんです。当時、夫が担当していた家事・育児といえば…ほぼゼロでした。

N ええ、それはキツイですね。もっとやってよとパパに言ったことはありましたか?

おぐら もちろん訴えていましたよ。でも、朝の7時から深夜0時まで家にいない人に何を頼もうかと…。結局、状況はずっと変わりませんでしたね。でも今は、息子が思春期に入ってきて父親の力が必要だと実感しているところなので、つくづくあのとき夫と別れなくてよかったなと思います(笑)。

K パパには名誉挽回で頑張ってほしいですね。

世のパパ達に練習してほしい!? 允彦の名言

おぐら 描いてて一番泣けたのは、第17話で允彦が「俺には夢があってだな。定年退職して子育ても終わって、ばーさんじーさんになったのぞみと俺で仕事の苦労と育児の思い出を『あーでもない こーでもない』って酒でも飲みながら語り合うんだ」とのぞみを励ますシーン(第17話「悩みながらも前進!のぞみフルタイム復帰します」)。

一同 ああ、もうこれは、ベストシーンではないでしょうか!

おぐら 仕事と育児の両方を語り合うために、っていうのがいいですね。そういうふうに夫が思ってくれると、こっちだって働く意欲ややりがいが見つけられるだろうし、続く允彦のセリフの「その時のネタ作りだ。同じ目線で同じ苦労しようぜ。な?」は、どうしてもここで言ってほしかった。

一同 理想が…。おぐらさんの理想が詰まっていますね。

おぐら ハイ(笑)。自分の子育て期には余裕がなかったので、こんなこと思いもしなかったけど。夫婦で乗り越えるっていう姿勢でいられたら、かかる負担は同じでも気持ちの面でだいぶ楽になりそうですよね。

松田 允彦さん、いい男だな(ポツリ)。

小林 「一緒に頑張ろうよ」というのはよくあるセリフだけど、そうじゃなくて「同じ目線で同じ苦労を」というのはズキュンときますよね。子育て中は目の前のことでいっぱいいっぱいだし、夫婦関係もいっぱいいっぱいだけど、二人でもっと遠いところを見ていて、そこに楽しみが待つということを二人とも知っているってすてきだなと思って。

 おぐらさんは、旦那様の仕事の関係でご家族で東京から大阪へ、福岡へ、そしてまた東京へと転勤を重ねていますよね。そのなかでご夫婦のどちらにもそれぞれの苦労があったと思うんですけど、そういう経験をしてきた人だからこそ出てきたセリフなのかなと思いました。この回は、ぜひ世のパパ達にも読んでほしいですよね

N そうですね、家内安全のためにも、皆さんに練習してもらいたい(笑)。最初は棒読みでいいから、このセリフをなぞって。毎日読んでいるうちに、1カ月くらい経てば自分のものになるかもしれません!?