言い訳をせずに自分で勝ち取っていく感じがいい

K 松田さんにとっての名シーンは?

松田 私は第12話で、のぞみの妹のあゆみが「今月も稼いだーッ!!」とビガァーって目を光らせるところが好きですね(第12話「“手作り”より仕事を選んだ、でも…。弱気なのぞみ」)。

小林 あゆみの懐から通帳がさっと出てくるんですよね。「常に持ち歩いてるんかい!」と思わずツッコミました。

松田 仕事をやめて子育てに専念している友人の暮らしぶりを目の当たりにし、のぞみが落ち込むんですよね。自分は家事も育児も手が回っていないって。でも、「お金のために働いていると声高に叫ぶのはハシタナイ」みたいなことも、ともすれば言われがちなママ世界で、「それで何が悪い、稼ぐことほど尊いことはない」とあゆみが代弁してくれたようで、とっても気持ちがスッキリ(笑)。

N 小気味よいですよね。さっぱりしているというか。

松田 それから次に好きなセリフは、最終話でのぞみが毅然として言う「時間は足りない、やることはたんまり。責任も重圧も増し増しで。だけどこれが私の選んだ人生だ」最終話「涙は風圧でふっとばせ!私が選んだ人生だ」)。言い訳などせず自分で自分の人生を勝ち取っていく感じと、のぞみの表情がすごくいいですね。DUAL読者にはぜひ、つらくなったときにこの場面を読み直してほしいと思います。

N 確かに!

松田 もう一つ、第14話の「この悔しさもじれったさも多分子どもを産んだから味わうんだなって。そう思ったら『だったら、とことんこの状況を味わってやる!』って」というのぞみのセリフも好きですね~。(第14話「独身まみ子 なぜ姉達はあえて両立の道を選んだ?」

 平坦な人生はないし、平坦な人生ってつまらないですよね。だったら、「とことんこの状況を味わってやる!」と捉えてみるお母さんが増えるといいなと思います。味わうことに貪欲になれば、つらいことも経験として蓄積される。今の大変な状況は一生続くわけじゃないし、後々笑い話になる日が本当に来ますから。

K 実際、子育て中に「とことんこの状況を味わってやる!」という気持ちになったことはありますか?

松田 割といつも思っていて、子どもにも常に言っています。息子は野球チームのピッチャーをしているので、「ピンチを味わって楽しんだほうがピッチャーとして強くなるから逃げるな」ということをよく言うんです。そしたら、試合のたびに思い出すみたいで、「今日は楽しもう」とよく言ってます。切羽詰った状況に効く言葉なのかなと。

N ママの言葉が浸透してるんですね~。

おぐら 子育てでつらいのは、突発的なことがたくさん起こって、だんだん自分に余裕がなくなってくる状況ですよね。そんなときに「今を味わおう」って思えるといいですよね。

松田 それでいうと、のぞみは全体的に見て、いい子育てしてるなぁと思いましたね。仕事ではいっぱいいっぱいだけど、プライベートでは比較的余裕のある子育てをしていますよね。そんなに夫に当たることもないし、風太のこともよくかわいがってるし。

N 風太がかわいいといえば、第7話で保育園に迎えにきたのぞみに「マァマーッ」と風太が抱きつくシーンが忘れられません(第7話「働く母あるある 職場復帰ママのご褒美はアレ」)。

小林 会社の先輩ママ達が、のぞみのいない所で「ごほうびにアレがありますからね」「アレがあるから頑張れるんだよな…」などと話すんですよね。ちょっとドタバタの時期を過ぎた先輩だからこその視点ですね。

N この回を読んだとき、私はまだ授乳中で、本当に「あれ」がないと頑張れない時期でした。保育園の玄関でピンポンを押す直前までスマホで仕事メールをチェックしていたりするんですが、走ってきた子どもの表情を見た瞬間にスイッチが見事に切り替わる。頑張れる原動力ですよね、特にこの時期の。

K 本当にたまらない。かわいいですよね~。ママを見つけて、一生懸命走ってくるんですよね。

おぐら でも、そういうの、だんだんなくなってきますから。

N そうそう、そうなんですよ!もう少し大きくなったら、「今こっちで遊んでいるから」とか「もうちょっと後で迎えに来てほしかった」とか、ママのお迎えがないがしろにされるんですよ~。このあったかい感じ、期間限定ですよ!

松田 友達といるのが楽しいというのは、寂しいけど健全な成長ですよね。