汁っ気があれば「一汁」としてカウント

おぐら 描いててとても楽しかったのは、第14話の「風太!パン買ったから!!」というのぞみの必死な顔でした(第14話「独身まみ子 なぜ姉達はあえて両立の道を選んだ?」)。保育園帰りのスーパーで子どもがぎゃんぎゃん泣き…、恥も外聞もないこの顔、いいでしょ。

松田 スーパーに行くと、こういうママっていますよね。「あとちょっとだから、待って待って!」とか。

おぐら そういうときの顔って必死でいいなぁ~って思います。子どもの食事は栄養バランスを考えなくちゃとか、周りはとやかく言いますが、色々考えなくても、結局は子どもがおなかいっぱいなら幸せだと。このシーンだって風太に買ってあげるのはパン。でも子どものおなかをいっぱいにしてあげるのが大事なことなのかなと思います。

小林 自分をそんなに追い込まなくてもいいのよ、とお母さん達に言いたいですよね。それでいうと、おぐらさんから原稿が届いたときに一番笑ったところでもあるんですが、第12話でのぞみが「フツーの一汁三菜で申し訳ないんだけど」と言いながら、冷凍ギョーザのタレを「一汁」としてカウントしていたシーンは笑えました(第12話「“手作り”より仕事を選んだ、でも…。弱気なのぞみ」)。おぐらさん、これって実話なんですか?

おぐら え、そうですよ。私の言うところの一汁三菜って、ビールを一汁とします

一同 汁っ気があれば一汁としてカウント! いいですね~(笑)。

松田 ここのシーンも、允彦が笑い飛ばしてくれるのがいいですよね。カメラを取り出し、記念写真まで撮ったりして。

小林 小さい子がいる家って結構、空気が張り詰めていて、「俺も疲れてる」「私も疲れてる」みたいな感じになっちゃうじゃないですか。そんななかにこうした笑いがあって、大変さを一緒に笑い合えるってすごくいいですよね。心の持ちようでシリアスな状況は乗り越えていけますよね。

必死に仕事をしている姿を子どもはちゃんと見ているから

K 他にも、小林さんはどのシーンにぐっときましたか?

小林 第10話でのぞみが病気の子どもを預けたシッターさんに、「悩んで悩んで必死に仕事しているお母さんはいいお母さんだと思います」と言ってもらったシーンですね(第10話「『病児を預け出勤する意味って?』のぞみ2万円の涙」)。子どもが急に病気になったときってお母さんはかなりいっぱいいっぱいで、何とかこなしているように見えても、本人は「どうしたらいいんだろう」って迷子になったような不安を抱えているもの。でも、その張り詰めた気持ちを分かってくれて、優しくしてくれる人がいると本当にうれしいですよね。

N 実は私も、これとまったく同じことを経験したんです。上の子も下の子も当時はやっていた病気にもれなくすべてかかり、明日どうする?今日どうする?と切羽詰った状況が続いてたとき、入院先の病院の看護師長さんがワーママで、自分を責めていた私に「必死に仕事と子育てをしている姿を子どもはちゃんと見ているから。あなたはいいお母さんだからね」って言ってくれたんです。その瞬間に涙腺が崩壊。号泣してしまいました。のぞみと同じように目の前の状況から逃げたくて仕方なかったときに背中をさすってくれる存在に出会え、もう一度前を向く気持ちになりました。

小林 子どもが大きくなったら、今度は自分がそうやって声をかける側に回れるようになりたいですね。このマンガ連載をやっていて、ずっと思ってきたことの一つです。