社内でマタハラを解決できる人材を育てていきたい
―― マタハラNetとして、今一番大きな課題、目標は何でしょうか?
小酒部 法改正が通るので、政府へのアドボカシーは一段落ついたと思っています。
今度は企業への啓蒙活動ですね。企業研修をやりたいですし、企業の相談窓口で解決してもらいたい。相談担当者にはマタハラが何か、どう解決すればいいかという知識が必要になりますので、マタハラ防止に携わることができるトレーナーの育成セミナーを年に何回か行い、社内でマタハラを解決できる人材を育てていきたいと思っています。
もう一つが、逆マタハラの防止です。産休・育休で休んだ分の業務は、残った社員がフォローしているという会社が7割にも上ることが、私達の調査で分かっています。それは企業の規模は問わず、1000人以上の会社でも同様に7割です。
つまり、産休・育休に入った社員がいるのに、代替要員がいない。この状態では、「逆マタハラだ」という声が上がるのも当然です。フォローする側からしたら不公平だというのも当然なんです。
この問題に対して企業がきちっと対応をしなければならない。産育休取得者の人件費が浮くわけですから、それを周りに還元したり、フォローした人への評価制度を整えたり、対応策を提示したいと考えています。制度を利用する側と制度の利用をフォローする側とどちらもウィン―ウィンになっていく、これを“ダイバーシティーインクルージョン”という概念として広めていきたいな、と。
―― 確かに。産休・育休の間、周りの人が負担して、それでおしまいになっているところも多いですからね。
小酒部 逆に、自分の1年間の給料が他の人に振り分けられるとなると、快く休めるじゃないですか。「私の給料もらってね! じゃあ、お休み取ります!」「はい、行ってらっしゃい」となってもいいはず。そうしないのは、企業のマネジメントの怠慢です。会社が休職者の年収を吸い取り、残った人達に疲弊するまで働かせる。休職者側と残った社員とが、いがみ合っている。これは、悲劇です。
―― でも、解決に向けた動きもあるようですね。小酒部さんの連載でも配信している日本レーザーさんの記事などもそうです(* 日本レーザーの記事はこちら。「産育休者の仕事をカバーした社員に報酬を与える会社」)。
小酒部 こういった取り組みをこれからもどんどん紹介していきたいですね。
(ライター/水野宏信、撮影/村上 岳)