―― これを小酒部さん達、マタハラNetの力で達成したのですよね? 大きな成果です。それはいつから実施されるのですか?

小酒部 2017年1月1日からです。マタハラNetを立ち上げて2年でマタハラ防止義務化の施行までたどり着いた。こんなに早く対策の実行に漕ぎ着けた社会問題はそうないのではないかと思います。そもそもマタハラは古くて新しい問題であり、社会に置き去りにされてきた問題です。世の中の女性がいかに真剣に困っていたかということだと思います。そして、勇気ある女性達が声を上げ、力になってくれたからこその成果だと思います。

もしマタハラを受けても、自分から「辞める」と言ってはいけない

―― DUAL読者の中にもマタハラを受けている、もしくは当事者ではなくても、職場にマタハラが存在するという読者がいるかもしれません。その方に向けてアドバイスをいただけますか?

小酒部 自分から「(会社を)辞めます」とは絶対に言ってはいけません。最後の最後まで「辞める」と言ってはいけない。「辞める」と言ってしまうと、そこでもう交渉が途切れてしまい、証拠を集めることができません。会社にいて交渉している間に、録音や書面で証拠を集めることが大事なのです。その証拠があればあるだけ、司法の場で有効になるだけでなく、会社に事実を認めさせるときにも役に立ちます。

 マタハラ防止が企業に義務化されれば、企業の内部で解決をしなければいけないという意識が高まりますので、例えば、直属の上司からマタハラを受けた場合、証拠があれば、人事にそれを見せることができ、解決に向かうこともできます。自分の身を守るためにも、証拠を残してほしいです。

―― 誰にも相談できず、とにかく話せる人が欲しい、仲間が欲しいという人に対して、何かアドバイスはありますか?

小酒部 マタハラNetでは月に1回「おしゃべりCafe」という場を設けていて、直接みんなで集まって話せる場を用意しているので、ぜひ気軽に来てもらえたらなと思います。私達は行政機関や労働組合ではないので、会社に是正指導や団体交渉を……とはいきませんが、先輩のマタハラ被害者がどういう手順を取ってきたかといった具体的なアドバイスはできます。

 何より、「一人じゃない」と心強く感じると思います。会社を相手に戦うのはとにかく孤独です。同僚も距離を置きだしたりしますから。同じ思い、同じ経験をした人達が集う場には、ぜひいらしてもらいたいですね。

 弁護士、労働弁護団の無料ホットラインという電話相談もありますので検討してもらってもよいと思います。弁護士さんに相談したら必ず裁判になるわけでもなく、黒子のようにアドバイスをくださることもあります。