どうせ辞めるなら、マタハラの事実を認めさせ、会社都合退職に
日経DUAL編集部 人事部長に「仕事と妊娠を取るのは欲張りだ。仕事をしたいのなら妊娠は諦めろ」と言われ、小酒部さんはどうされましたか?
小酒部 私は妊娠を希望しているので、妊娠を諦めるわけにはいきません。主人に「会社を辞めたい」と泣き付きました。主人は「仕事を辞めるのは構わない。けれど、明らかに退職強要だよね、こんなにされて」と言い、どうせ辞めなければならないのなら、会社にマタハラの事実を認めさせ、会社都合退職で辞めようと夫婦で決めました。
すると「戦うぞ!」と怒りが湧いてきました。切迫流産中に自宅に上司が来たときの話を主人が録音していてくれたので、「他にも色々と証拠を集めよう。人事との掛け合いの録音も残そう」と動いたんです。退職強要を認めさせようと。
ただ、証拠を取りつつも、私は最後の最後まで踏ん切りがつかなかった。「何とか人事部で事態を収拾させてくれないか」と思っていたんです。私に許す機会をいただけるのであれば、労働審判にも持ち込まないつもりでした。
でも逆に言えば、マタハラNetの活動がマタハラに関する法改正達成にまで至ったのは、この会社が最後の最後まで悪者でいてくれたからだと、今振り返れば思います。おかげでここまでやってこれましたので、「よくぞ私をいじめてくれた」と今なら言えます。
―― 最後の最後まで完全に悪だったわけなんですね。
小酒部 そうですね。労働審判は裁判官の心証が悪くなりますから、普通は当事者が出席しなければいけない。にもかかわらず、マタハラをした当事者の上司達は逃げて、関係ない部下が労働審判に出席し、今度はセカンドレイプならぬ、“セカンドハラスメント”を行うわけです。私には証拠がありましたが、会社側には何もない。そうすると今度は、私をいかに精神的に潰すかを考えて、会社側の反論として、私の人格攻撃を始めるのです。労働審判ですから3回の審議で終わりましたが、民事訴訟に進む女性はこの人格攻撃を受け続けなければならない。この人格攻撃を耐え抜き判決まで漕ぎつけてくれる女性がいるからこそ、判例ができるのだということは、広く知られるべきでしょう。