スタッフ全員と一緒に問題解決できるスキームを取り入れた

羽生 マネジメントではどんなことを意識されていたんですか?

みなみ 現場で働くスタッフ全員と一緒に問題解決できるスキームを取り入れました。具体的には、店舗に人の出入りを数えられるカウンターを導入して、「店の前を通った人数」と「店の中に入った人数」をとって入店率を数値化しました。入店率が悪いと「店頭のディスプレイを変えてみようか?」と対策が見えてくるからです。同じように「声をかけたお客さまの人数」「試着室に入ったお客さまの人数」「購入したお客さまの人数と購入点数」も数字として出して、改善の余地があるポイントを探ったんです。客観的な数字で分析するから、みんなで議論もしやすいんですよね。

 同時に力を入れたのが、販売員のファーストアプローチのレベルを上げること。お客さまが店に入ってすぐに「ご試着どうぞ?」と声をかけてもまったく効果的ではないので一切禁止に。それよりも「どんなにオシャレな方でも販売員から聞かないと知り得ない情報」を提供するように指導しました。例えば、今期のテーマカラーがブルーだとしたら、「そのブルー、きれいですよね。今期のデザイナーのテーマは“地中海”なんです」と言うと、ぐっとその服の魅力が高まりますよね。そういうアプローチの技術を伝えていきました。

羽生 まったく印象が変わりますね!

みなみ そうやって自分らしいスタイルで、自分が大切だと信じるメッセージを伝えていくマネジメントをやっていくと、徐々に部下との距離も縮まってきました。「みなみさんは私たちのことを叱ろうとしているわけではない。一緒に問題解決をしてくれる仲間なんだ」と認識してくれたみたいです。そのうち、私が何も言わなくても勝手に課題を見つけて解決してくれるチームが育っていきました。

羽生 そういった経験が凝縮されて、今のお仕事につながっているのですね。独立起業を考えたのは何歳のときでしたか?

みなみ 34歳で「MAX&Co.」に同じくエリアマネジャーとして転職し、同じころに商社に勤める2歳下の夫と結婚しました。「月曜以外は飛行機移動」とハードに働いていましたが、雑誌の記事でたまたま見たパーソナルスタイリストという職業に興味を持ったんです。その道の第一人者として知られる政近準子先生のスクールで学んで2年後に先生からお声掛けがあり、先生が代表を務めるファッションレスキューに入社しました。その後、妊娠・出産を経て38歳の時に独立しました。(後編に続く)

(取材・文/宮本恵理子 写真/菊池くらげ)