子どもが生まれるまでは、仕事にめいっぱい没頭できた。産休・育休中は、育児に専念することができた。それが……いざ仕事復帰をすると、仕事と育児の両方が日々降りかかってくる。時間は同じ、1日24時間。どちらも大事、どちらも最優先。そんなとき、みなさんは何を選び、何を諦めているのでしょうか。

 バリバリでもゆるゆるでもない働き方のワーママに、リアルな体験、心の内を語ってもらいます。

【今回のワーママ】 M・Tさん
年齢:43歳
業種(職種):翻訳業(現在フリーランス)
住まい:東京都
子どもの年齢:10歳/8歳(息子1人、娘1人)
●仕事と育児をしていくために、私が選んだもの、諦めたもの
選んだもの…通勤時間ゼロで、子どものことを優先的に対応しやすいワークスタイル
諦めたもの…弁理士としてのキャリア、正社員という安定感

弁理士の仕事が楽しくて、気づけば真夜中、という日々

 私は大学卒業後、メーカーに数年勤めた後、特許事務所に翻訳者として転職しました。学生時代に留学経験があり、いつか英語を使う仕事をしてみたいと思っていたのです。仕事で特許を扱ううちに、特許について専門的に勉強したいと思い、働きながら弁理士の資格も取りました。アソシエイト弁理士兼翻訳者として、特許書類の翻訳、国内外の特許庁に提出する書類を作成するほか、発明者さんに会いにいってアイデアを伺うなど、幅広い仕事をする日々。仕事が楽しくて楽しくて、気づけば真夜中ということもよくありました。

 そんなとき、第1子の妊娠が判明。弁理士試験に合格した1年後、アメリカ出張の数日前。「弁理士としてやっとお客様を任せていただけるようになった」と感じていたときでした。

 結婚して少し経ち、いつか子どもが欲しいとは思っていたけれど、正直戸惑いました。いざ妊娠がわかると、「子育てと仕事との両立」を具体的にイメージできていない自分に気づいたのです。友人にはワーキングマザーがほとんどおらず、勤務先では、産休・育休を取得したことがある人が一人もいません。実母も義母も専業主婦。当時は「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が使われ始めたばかりのころ。情報が圧倒的に少なく、いわゆる“3歳児神話(子どもは3歳までは母親のもとで育てたほうがいいという説。のちに、厚生労働省の研究班などから否定されている)”にもとらわれて、小さい子どもを保育園に預けて働くというイメージがわきませんでした。

 でも、「私が、産休・育休の第1号にならなくてどうするんだ」という思いもわきました。産休・育休の取得のために、「休業・仕事復帰計画書」を勤務先の所長と上司に提出して交渉。所長と上司、総務担当者が協力してくださり、産前6週間と産後8週間の産休を取得しました。

 産後2か月過ぎたころから、メールで書類のやりとりをしつつ、週に一度出社してミーティングをするスタイルで少しずつ仕事を再開。職場初の産休・育休取得者として「がんばらなくては!」という気負いがあったのです。

 ただ、保育園の待機児童がいるという情報をキャッチしておらず、「保活」を始めたタイミングが非常に遅く、認可保育園は全滅…。たまたま、電話先着3名で入園希望者を募っている認証保育園があるという話を聞き、運よくその保育園に翌年4月から入れることになり、本格的に復帰しました。