その気持ちはよくわかる。大人になると友達が減るものだが、お互いに忙しいだけでなく、ドタキャンしたくないがために約束できないという事情もあると思う。

独身の頃のランチキャンセル、今ようやく分かる

 まだ独身だった頃、仕事をやめて子育てをしている友人からランチの誘いがあり、仕事の予定をなんとかやりくりしてようやく会う時間を作ったら、当日になって「子どもが熱を出したから行けない」と連絡があった。

 当時の私は彼女がどれほど心苦しい思いでいたかを想像できず、「こっちは仕事を調整してやっと捻出した時間なのに、いきなりキャンセルするなんて、彼女って本当に世間知らずだな」と、偏見に満ちた上から目線の感想を持ったのだった。以降、疎遠になってしまった。のちに、自分が子どもを育てるようになってからは、それこそ何度も何度も「子どもが熱を出して……」と謝って仕事を急に休んだり、会食の約束をキャンセルしたり。やっと、あの時の彼女の気持ちがわかったのだった。

 子ども達が大きくなり、東京にいる3週間は一人暮らしをしている今の私は、以前よりも夜の会食に行きやすくなった。でも、やっぱりドタキャンが怖い。

 つい先日も、めちゃくちゃ忙しい知人たちと奇跡的にご飯に行けることになり、とても楽しみにしていたのに、3日前になって仕事が入り、キャンセルせざるを得なかった。みんなが美味しいご飯を食べている間、私はすぐ近くのテレビスタジオで、衣装のセーラー服を着て、VTRを見ていた。

 私が医者や消防士なら、人の命に関わる仕事なのだからと納得してくれる人も多いだろうが、テレビタレントの仕事は傍目にはお遊びにしか見えないので、余計に信用を失いやすい。それでも、私の家族はそのお金でご飯を食べている。生きるためには働かねばならない。カメラの前でセーラー服を着ておしゃべりするのも、私にとっては真剣勝負なのだ。

 不義理をしたくないし、生活もしなくちゃならない。これからも謝り続けるか、誰とも約束しない孤独な暮らしを選ぶか、悩ましい選択である。