ピラティスの先生との約束も、そんな感じでしょっちゅう謝っては変更してもらう。長く関係の続いているサロンやレッスンは、そういう無礼を繰り返しても対応してくれる寛容なところだ。

友人との大事な約束も、家族を養うためにキャンセル

 当然、友人との関係も微妙になる。ひと月前から約束していても前日にダメになることがあるし、急にランチに変更してもらうことも。お互いに忙しいのだし、せっかく時間を空けてもらったなら仕事を断ってでも友人との約束を優先させるべきなのだろうが、定収入がないので仕事を一つでも多くこなさないと、家族を養うことができなくなってしまう。

 呆れているだろうな、だらしないとかいい加減とか気分屋とか思われるのだろうな、と思いながら、ごめんなさいとドタキャンしたことは数知れない。そのとき、いくら「テレビ業界ではこういう事情があって……」なんて言っても見苦しい言い訳になるだけだ。理由がどうであれドタキャンはマナー違反なのだし、信用を失うのも当然のこと。暮らしていくためにはそれも仕方がない、と諦めるしかない。テレビタレントは、言われた時間にカメラの前にいなければ、お金が入ってこないのだ。

 おそらくあの「約束はできません。気の向いたときにお電話を」と言った知人も、そんな悔しい思いを何度か経験して、相手に失礼なことをするくらいならいっそ約束すること自体をやめてしまおうと思ったのだと思う。