昨年12月12日(土)に虎ノ門ヒルズ フォーラム(東京都港区)で開催された日経ウーマノミクス・フォーラム「グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット」。「女性リーダーの強み」をテーマに、ご応募いただいた日経ウーマノミクス・フォーラム女性会員が充実した時間を過ごしました。

キーノートレクチャーに登場したのは、スイスに拠点を置く世界トップクラスのビジネススクール・IMDで「女性向けリーダーシップ・プログラム(Strategies for Leadership)」を主宰するギンカ・トーゲル教授。世界中の女性エグゼクティブを教えてきたトーゲル教授がこのたび新著『女性が管理職になったら読む本』(日本経済新聞出版社)を出版しました。その中から日経DUAL読者にぜひお読みいただきたい内容をご紹介します。

組織のあらゆる階層で、女性の昇進確率のほうが男性の昇進確率より低い

ギンカ・トーゲル教授
ギンカ・トーゲル教授

 アメリカの「フォーチュン500社」に選ばれた企業のうち、女性がCEOを務めている会社はたったの24社、比率にして4.8%にとどまっています。イギリスの「FTSE100株価指数」の構成企業では4%、オーストラリアの「ASX200株価指数」の構成企業では3%、フランスの「CAC40株価指数」やドイツの「DAX30株価指数」の構成企業に至っては女性CEOが1人もいません。日本の上場企業でも女性社長は極めて珍しく、全上場企業3584社のうち、女性が社長を務めるのは29社、比率にして0.01%未満となっています。

 取締役会の女性比率では、世界で初めて「ジェンダー・クオータ制(取締役会などの一定割合を女性が占めるようにすることを法令等で義務付けた制度)」を導入したノルウェーのように、一部では女性の登用が進んでいる国があります。しかし、ほとんどの国では女性取締役の割合が20%にも達しておらず、1桁台の国も珍しくありません。

 女性比率は徐々に増えてきてはいますが、そのペースはきわめて遅いというのが現状です。

 その理由としてよく言われるのが「ガラスの天井」の存在です。ガラスの天井とは、「経営陣の座というゴールが目前に見えていながらも、そこにたどり着けない」という女性のキャリアのもどかしさを表現した言葉です。

 しかし、この言葉は、現実の企業社会の実態を正しく表現できていません。なぜなら、経営陣の一歩手前まで来て初めて壁にぶつかるのではなく、キャリアの初期段階から、女性にはいくつもの関門が存在しているからです。米ノースウェスタン大学のアリス・H・イーグリー教授は、「女性を待ち受ける様々な関門は『ガラスの天井』というより『キャリアの迷宮』と呼ぶにふさわしい」と述べています。

 米大手コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーが行った調査は、「組織のあらゆる階層で、女性の昇進確率のほうが男性の昇進確率より低い」ことを明らかにしています。

 一般社員から中間管理職へ昇進する確率は、男性が女性の3倍です。中間管理職から上級管理職へ、上級管理職から経営会議メンバーへ昇進する確率は、それぞれ男性が女性の2倍、そして、経営会議メンバーからCEOに登用される確率は、男性が女性の5倍となっています。

 このため、キャリアをスタートさせてまだ間もない女性の多くが「自分が昇進する可能性は低い」という現実を実感することになります。その結果、「仮に私が辞めても、組織には何も影響がないのでは?」と自問する女性が増えているのです。こうして、エントリーレベルでは男女が半々でも、優秀な女性が次々と辞めていってしまうといった事態が起きているのです。