子どもの感性と知性は両輪で育つ

 「子どもの感性と知性というのは、遊びの中で、連動して育っていくもの」と竹井さん。「例えば、子どもが歩いているときに、蝶々を発見したとします。『キレイな蝶々!』と叫んだ後、『あの蝶々の名前は何ていうんだろう?』と思いますよね」

 親に聞いてみて、その名前を知ることもあれば、分からなかったとしても、図鑑で調べてみたりすることもあるでしょう。

 「親と一緒に図鑑で調べてみて、『あ、モンシロチョウっていうんだ』と分かったら、モンシロチョウを覚えます。後日、また別の蝶々を見つけたら、『この前とは違う模様だけど、何ていう名前かな?』と、また調べるのです。そうやっていくうちに、子どもはさらに蝶々に興味を持って、今度は蝶々は何を食べるのかなど、さらに深く知ろうとする流れができてくるのです」(竹井さん)

 これこそが、感性と知性が両輪となって育つ流れなのだと、竹井さんは言います。どんなに難しい漢字や計算の問題が解けるようになったとしても、虫が怖くて触ることもできないとか、土に触れると汚れるから嫌だなど、五感を使った原体験がなければそれに関する情報をキャッチしたいという意欲につながりにくくなります。

 「子どもは、“感性”によってものに興味を持つようになり、知りたいことを調べたり、考えたりすることによって“知性”が育つのです。感性が豊かであればあるほど、強い関心を持つようになる。感性と知性が連動しているからこそ、両輪となって大きく育つのです」

賢い子どもは、“生きる力”も育つ

 竹井さんが考える「賢い子ども」とは、どんな子どもなのでしょうか?

竹井さんの著書
竹井さんの著書

 「賢い子ども、頭のいい子どもと言っても、いろんな解釈ができます。テストがデキる子どもも頭がいいと言えますし、他にも色々とあります。しかし、私が考える、本当の意味での賢い子どもというのは、“感性と知性が両立している子ども”です」

 子どもだけでなく大人もそうですが、人は、自分の感覚器官を通じて日々、様々なことを判断して生きています。そこで必要なのが感性の力なのです。

 「自分の感性を存分に生かして、知性をつくっていくときの子ども達の姿を見ていると、達成感や生きがいなど前向きな感覚を体いっぱいに感じています。感性と知性が連動し、普段の生活の中で『気持ちがいい!』『楽しい!』『できた!』『やった!』といった気持ちをたくさん経験することによって、ゼロの状態から自分の力でつくりだす達成感を感じることができる。その体験こそが、より強い“生きる力”となっていくのです」

 次回は、感性を磨き、生きる力を育むための具体的な土遊びノウハウを紹介していきます。

(取材・文/國尾一樹 写真(竹井先生)/岩瀬有奈 構成/日経DUAL 加藤京子)

竹井史

1959年大阪生まれ。筑波大学大学院人間総合科学研究科後期博士課程芸術専攻満期退学。富山大学人間発達科学部教授等を経て、愛知教育大学教育学部創造科学系教授。専門は美術教育、幼児教育(造形・遊び)。これまでに、地域住民参加のイベントを15年間企画・運営し、7万人以上の親子と触れ合う。著書に『0~5歳児 どろんこ遊び 水遊び プール遊び 180』『3・4・5歳児の製作あそびネタ 作って遊べる カンタンおもちゃ』『どんぐり・落ち葉・まつぼっくり製作BOOK』(すべて、ひかりのくに刊)など。