「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」という固定観念はいまだに根強い

 なぜこうした反発が女性に対してのみ、しかも過剰な反応として起こるのでしょうか。

 それは私達の中に「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」そして「リーダーはこうあるべき」といった固定観念があるためです。女性がリーダーシップを発揮しようとすると、こうした複数の固定観念の間で対立が生じ、反発が起こります。簡単にまとめると、次のような図式です。

 男性はこうあるべき = リーダーはこうあるべき
 女性はこうあるべき ≠ リーダーはこうあるべき

 最近の調査から、こうした固定観念が対立するメカニズムが明らかになってきました。

 米ラトガース大学のラドマン教授らのチームは、「『男性が上、女性は下』といった暗黙のルールが私達の中に存在し、それと食い違うときに反発が起きる」という仮説を立て、それを検証しています。なお、ここでいう上か下かは、取締役や部長といった組織上の役職ではなく、社会的・文化的に私達の中に形成された地位を指しています。

女性はリーダーを目指すべきではないのか?

 これはまるで罠にはまったような状態です。女性がリーダーシップを発揮しようとすると、固定観念の対立という「解決できない方程式」に直面してしまいます。

 「キャッチ22」という言葉をご存じでしょうか。「2番目のことをすることなしに1番目をすることができない状況下であるにもかかわらず、1番目のことをする前に2番目をすることができない」というパラドキシカル(逆説的)な状況を指す言葉です。私は、この女性リーダーが直面するパラドックスを「ウィメンズ・キャッチ22(women’s catch22)」と呼んでいます。

 では、女性はリーダーなど目指すべきではないのでしょうか。

 そうではありません。確かに、批判されるなどといった反発(ペナルティ)に直面するリスクはなくなりますが、それではいつまでたっても女性リーダーは誕生しません。男性も女性も同等だと認識されている社会(それなりの数の女性リーダーが存在している社会)が実現して初めて、女性リーダーに対するペナルティはなくなるのです。

 女性のロールモデルが多数存在し、男女が均等にリーダーとなる社会になれば、「男性が上、女性が下」といった固定観念(ジェンダー・ヒエラルキー)も変化していくでしょう。

 しかし、私達がいるのは出発点です。こうした変化が起こるまでには忍耐が必要でしょう。というのも「女性はこうあるべき/こうあるべきではない」「男性はこうあるべき/こうあるべきではない」といった固定観念(ジェンダー・ステレオタイプ)は、私達の社会が長い年月をかけて生み出してきたものだからです。