子どもを「ジャッジ」しない。信じ切ること

アグネス そうですね。彼らを見ていると、一生懸命に人を愛していますよね。付き合っている女の子に対してもそうだし、同僚も本当に大事にしています。長男はCOOという副社長のような立場になって、会社の中には年上の人も結構いますが人を大事にしているし、相手の言うことをきちんと聞いている。みんなが彼のことを慕っています。エンジニアとして働いている二男も本当に先輩達に好かれていて。「人望がある」と言われていましたけれど、家に帰ったら冗談しか言わないあの次男が! と意外でした(笑)。親が愛情をかけた分だけ、彼らは人にも愛情をかけている。一生懸命彼らを信じて、ジャッジしなかったことが彼らのためになっているんだと思いました。

―― ジャッジしないこと? 

アグネス そう。こんなエピソードがあります。あるとき、スタンフォードへ優秀な女性が担当するコンピューターサイエンスのクラスを見に行く機会があったのですが、その先生は来てはいるんだけれど生徒に教えない。いつもアシスタントに教えさせている。私がそれを見て三男に「無責任だね」って言ったら「ママ、分からないかもしれないけれど、そのアシスタントって実は目が見えないんですよ。目が見えない人を育てるために彼女は毎日その人を連れてきて、教えはしないけれど彼が教えるのを隣で見ているんです。ママ、事情も分からないのに判断(ジャッジ)しちゃ駄目だよ」と三男から言われました。子どもから逆に正されますよ、最近は。なんだよ、こいつら。もう参ったなーと思います。

―― すてき! まるでママの先生みたいですね。

アグネス イヤですよ、もう(笑)。小さいとき子どもに言っていたことを、そのまま言い返されたっていうか。

―― 私も小4の女の子と小2の男の子がいて、小さいながらにハッとさせられる瞬間があります。その瞬間ってピシャってやられた気分でもありますけれど、子どもを育ててよかったなと思える瞬間ですよね。子どもに教えられる瞬間ほど、幸福はないと思いました。

アグネス うんうん、こんなにうれしいことはないですよね。長男は、私がスタンフォードに留学していたとき、気づいたらゴミ箱の中から物を取り出しているんですね。「汚いのにやめなさいっ」て私が言ったら、「ママが捨てたから“ゴミ”になったんだよ。これゴミじゃなかったのに。ママが“ゴミ”にしただけなんだよ」って。これまだ使えるから、おもちゃにできるじゃないかと言われて、あれから環境問題に興味を持つようになったんです、私(笑)。

―― 「ママが“ゴミ”にした」、ですか。すごい名せりふですね。

アグネス 「私、すっごいダメだった」と反省しましたね。

一人っ子は一番きついかも。2人目は楽、3人目は楽しい!

―― お子さんが3人もいていいなと憧れます。個性は三者三様だと思うんですが、一人一人の個性を大事にするって、1日24時間しかないしお仕事もされているしで、大変ですよね。どういうふうに3人の息子さんに接していらっしゃったんですか。

アグネス 秀才タイプの長男、好奇心旺盛だけど注意力散漫な次男、理解は早いけれどじっくり考えるのが苦手な三男。個性も得意分野もそれぞれですが、3人の兄弟を比べることは絶対にしませんでした。それは、自己肯定感を持たせるためです。

 長男1人だけでもこんなに大変なんだから、と最初はもう絶対できないと思いましたね。次男が生まれたら、私はたぶん死んじゃうなと(笑)。案外、2人のほうが楽でした。少し自分が落ち着いたし、2人で遊べるし、気が楽になりました。3人目は、もっと楽しくなった。冷静になれたし、2人目と3人目を7年と少し間を空けて産んだので…。3人目、ぜひおすすめです。

―― 長男が生まれて、私もちょうど7年です。

アグネス 今がちょうどいい時期じゃないですか! わが家では長男と二男が三男の面倒を見てくれましたし、子育てをより楽しめましたね。

―― 3人目は冷静になれるんでしょうか。