「ほめ」を多用すると起こる副作用

(1)「ほめて」ばかりいると、「ほめないと、やらなくなる」
 子どもや部下を「ほめ言葉」で動機づけしていると、彼らはその行為(例えば、ゴミを拾うことや地道な営業活動など)を「ほめられるからやる」ようになり、ほめる人がいないときには決してやらなくなります。

(2)「ほめ」とセットの「ほうび」がエスカレートする
 子どもや部下を「ほめ言葉」でコントロールする下心が私達親の側にある場合、時として、「言葉」だけでは相手が動かないことに業を煮やして「○○をあげるからやってごらん」と「ほうび」をセットにして与えてしまうことがあります。効果的なときも多いでしょう。

 しかし、これを続けていると、必ず相手からの要求がエスカレートします。「今度のテストで100点取ったら、何を買ってくれるの?」「給与が上がらないなら、やりたくありません!」このような条件闘争をされないように、「ほうび」によるモチベーション管理には十分に気を付けたほうがよいでしょう。

(3)「ほめすぎる」と「失敗を恐れ」「むしろ自信を失う」
 いつも結果ばかりに注目し、ほめたり叱ったりを繰り返していると、子どもや部下はほめられるような結果を出せるかどうか予測できない程度にチャレンジングな課題には、初めから挑戦しようとしなくなります。ほめられることが確実なことにしか挑戦しなくなるのです。

 多くの方がこの点に気づくと、あっと驚き、また、納得します。挑戦してみてほしいことに、子どもや部下がハナから諦めてしまっていることが増えてきていませんか? それはきっと結果を重視し過ぎた「ほめ」の弊害でしょう。

(4)指示待ち人間になる
 「ママ、これやっていい?」「パパ、これやっちゃダメ?」と、事細かに確認してくるようになったら要注意。親の評価、親の顔色をうかがう傾向が強まっています。そのままいけば、順調に「指示待ち人間」になってしまうでしょう。あなたの職場にも「指示待ち人間」が増えてはいませんか?

出典: アドラー 子育て・親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 〜父母が学べば、子どもは伸びる〜(熊野英一 / アルテ)
出典: アドラー 子育て・親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 〜父母が学べば、子どもは伸びる〜(熊野英一 / アルテ)