C保育園は閑静な住宅街にできたため、建設に反対する人も少なくなかったようだ。特に、子どもの声による「騒音」を気にする人が多く、保育室の窓も一部ははめ殺しになっているなど音が外に漏れない配慮がなされていた。開閉できる窓もそれほど大きくないのだが、保育中は基本的に締め切ったまま。子ども達が散歩に行ったりしている間だけ開けて空気の入れ換えをしていた。そのため室温調整はエアコンに頼るしかない。5月のとても気持ちの良い天気の日なのに少しクーラーが効きすぎるくらいの人工的な環境のなかで遊ぶ子ども達を見て、先生に「真っ昼間くらいは窓を開けたりできないんでしょうか」と聞いたことがあるが、少しでも窓を開けるとすぐに苦情が来てしまうので難しいという返事だった。

 子どものころに暑い夏を体験し、しっかり汗をかくことが汗腺の発達につながるという話を聞いたこともある。長時間を過ごす保育園でほとんど外気に当たらずに過ごすことは、大変気がかりだった。締め切った室内で、ちょっと興奮して歓声をあげてしまった男の子達を、保育士さんが「シーッだよ」と注意しているのを見て切なくなったこともある。

アクティビティーは教育というより他の雑用ができる時間!?

 室内がそんな状態なので、せめて公園にでもたっぷり出かけてほしいところだったが、今までの2園に比べると、スタッフ不足からなのか、散歩が少なめなのも気になった。すぐそばに中規模の公園があったが、初夏のころ、娘に聞くと、その公園で遊ぶことはあまりないという。週に2~3回、リトミックや英語教室などのアクティビティーがあって午前中は忙しく、その日は散歩に行かないのでなかなか外遊びの機会がないのだろうか(親としては、年少くらいになったら、散歩は午後に行っても構わないと思っていたのだが…)。

 実は私自身はこのアクティビティーというものにも疑問を抱いていた。保育園では思い切り駆け回って体力を付け、友達と遊んだりケンカしたりするなど、保育園でしかできないことをしてほしい。一人っ子の娘には友達と密接に触れあい、疑似でもいいからきょうだいのいるような体験をしてほしかった。習い事なら個人的に行える。それに、自分の目でしっかり先生を選び、娘に合った教室に通わせたいと思っていた。

 今も交流のあるA保育園の先生達がわが家に遊びに来たときにそんな愚痴をこぼすと、「外部の先生に教えてもらっている間に他の雑用ができるので、保育士としてはちょっとラクでもあるみたいですよ。喜んでくれる保護者も多いようだし」。そういえば、A保育園でも保護者からアクティビティー導入の要望が毎年のように出ていたが、「必要ない」という返答で、外部に頼らずともきちんと「教育」できると考えていたようだった。最初にA保育園の洗礼を受けていたからか、わが家としてはその方針のほうが腑に落ちた。

 C保育園ではアクティビティーを週に数回も取り入れているので知育面を重視しているのかというと、そうとも思えない。近隣園では工作に力を入れていて、お友達の家に行ったときには園で作ったという独創的な作品が壁のあちこちに貼ってあったがC園ではそういうこともないし、これまでの園では空豆のさやをむいたりキュウリの塩もみを作るような食育の時間が時折あってエプロンを持参するよう言われたりしたが、そういうことをしているのかどうかも分からない(あまりないように思えた…)。一度、担任に聞いたことがあるが、「保育園は生活の場なので」という見解のようで、園としての確たる方針があるわけではないようだった。

 おまけに新設園なので、おもちゃや絵本の数も、今までに比べるとかなり少なく感じられ、9時間以上も、園で何をして過ごしているのか不思議だった。